コルチコステロイドの“systemic activity”と“local activity”には,かなり異なつた作用があることは,一般に認められており,また極めて興味深い問題である.同時に,それぞれの実験結果の吟味にあたつては,それがinitial actionすなわちprimary actionであるか,あるいはsecondary actionであるかということは,重要な意義を持つている.少なくともsystemic activityの場合は,体内に入り組んで存在するホルモン調節機構への働きをはじめとして,核酸合成の促進を介してenzyme inductionの増加,さらに,その酵素に基くsecondary actionの発動がある.また,生体の複雑な代謝調節機構と相関し,あるいはそれと無関係にprimary actionとして,酵素反応の抑制または促進作用を発揮する.一方,local activityはNADH酸化の抑制,ATPase活性化などを介して,特に局所抗炎症作用という面から追求されている.したがつて,実験方法もgranuloma内への注射によるものが大部分を占めているが,皮膚科学的に見ると外用コルチコステロイドは,まさしくこれに通ずるものである.臨床的応用は,1952 SuIzbergerらによるcompound Fの使用にはじまり,その後,多くの合成副腎皮質ホルモンが臨床的に用いられ,現在,皮膚疾患治療の大きな武器となつている.しかしながら,その作用機作に関する報告きわめて少く,未解決な部分があまりにも多い.このことの要因は,まず“ステロイドの作用する組織学的な標的部位はどこか?”という問題であろう.細胞内へ侵入したコルチコステロイドが直接に細胞内要素に作用するものであるか,あるいはまず細胞膜に作用し,2次的に細胞内に変化を来たすのか.さらに焦点を絞れば,ステロイド本来の作用を生化学的に検討するためには,いかなるレベルの皮膚試料が望ましいか,などを検討しなければならない.同時にこの問題に関連して,in vivoとin vitroとの差を,どの程度まで縮少することが可能であろうかを,考えなければならない.第2に,肝・腎などの実質性臓器と異なり,線維性成分の豊富な皮膚から,どのようにして試料を作製したら良いかなど,いくつかの未解決な問題がある.特に,安定性や再現性を要求する酵素活性の検討には重要な事項である.以上のことから,複雑な背景を考慮せねばならないin vivoよりは,subcellular levelで単純化された系を利用するin vitroの検索は,重要なアプローチの一手段と見做すことができる.著者は,ステロイドとの関連性が強い複合酵素系である糖代謝経路のうちから,細胞内可溶性蛋白分画に存在するglucose-6-phosphate代謝酵素群(図1)を選び,皮膚の粗無細胞性上清(crude subcellular or cell-free supernatant)につき,その活性およ
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