著者らは,BCCの増殖様式をより明確にする目的で,チミジンのアナログであるBrdU(bromodeoxyuridine)とそのモノクローナル抗体を用いて検索的実験を行った.充実型BCC6例について,1)裂隙(-)の21個の胞巣,2)裂隙(+)の6個の胞巣,表在型BCC2例について,3)裂隙(-)の5個の胞巣について,それぞれ最外層細胞,内側細胞に2分してそれらの標識率(Labeling Index L.I.)を算出し検討を加えた.症例ごとにまとめて,最外層細胞群,内側細胞群のL.I.の平均値±標準値差(M±S.D.)を求め,これを比較した,1)と3)の裂隙(-)の症例では,全て最外層細胞群のL.I.のM±S.D.が高かったが,2)の裂隙(+)の症例では,逆であった.以上をまとめると,BCCの増殖においては,最外層細胞が主としてその役割を担うが,裂隙を生じた胞巣においては,同部のその役割は,消失ないし少ないものと推察される.