日本皮膚科学会雑誌
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120 巻, 12 号
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皮膚科セミナリウム 第67回 皮膚病理学エッセンシャルズ
  • 清原 隆宏
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第67回 皮膚病理学エッセンシャルズ
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2355-2365
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    メラノーマは極めて多様な組織像を呈し,Clark分類の4型以外にも多くの亜型が存在する.メラノーマの病理診断のために最も重要なことは,弱拡大で左右非対称性で不規則な全体的構築を確認することである.表皮の厚さや反応,メラニン顆粒や炎症性細胞浸潤の分布,胞巣の分布なども含めて左右非対称性である.将来的にはダーモスコピーや遺伝子解析の知見も含めたメラノーマ,Clark母斑,Spitz母斑の診断基準の確立が期待される.
  • 河井 一浩
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第67回 皮膚病理学エッセンシャルズ
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2367-2378
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    菌状息肉症は最も頻度が高い皮膚リンパ腫であるが,早期病変では病理像のみによる診断は困難である.反応性病変との鑑別のためには,腫瘍性リンパ球の細胞形態(異型性)に加えて,浸潤パターンや表皮・真皮自体の変化など構造的な組織所見にも注意を払う必要がある.早期病変の病理診断の手がかりとしては,いくつかの表皮内リンパ球浸潤パターンの有用性が高いが,単一の所見に基づいて菌状息肉症と診断することはできない.病理像から確定診断できなくても,他の特定の疾患と診断できない場合は,菌状息肉症の可能性を除外しないことが重要である.
  • 陳 科榮
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第67回 皮膚病理学エッセンシャルズ
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2379-2391
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    血管炎とは血管壁を中心に炎症性細胞浸潤によって血管破壊をきたす炎症性疾患である.血管炎の確定診断は病理組織診断であるが,血管炎を伴わない多くの血管炎類似疾患や類似組織所見と区別するには血管炎の概念と病理組織診断の基本原則を理解する必要がある.皮膚血管炎において,真皮の小血管炎は主に細静脈を侵す好中球浸潤を主体とした好中球性血管炎,いわゆる白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis)である.下腿の静脈炎は動脈炎と誤診されやすく,誤診による過剰な治療を避けるためにも病理組織学的に動脈炎か静脈炎かの正しい判別が必要である.
原著
  • 下浦 真一, 平林 研二, 中野 英司, 高井 利浩, 村田 洋三, 熊野 公子
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2393-2397
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    35歳男性.糖尿病やGardner症候群の既往は無い.数年前に後頸部に無症候性のしこりに気づいた.後頸部に15×16 mm大,弾性硬,下床との可動性は良好の皮下結節が1つある.皮膚エコーでは辺縁が不整,内部不均一な部位があり,後方エコーは減弱していた.局麻下に全摘した.全摘標本では主に皮下に境界が不明瞭な膠原線維の増生があり,膠原線維は太く,束状で,不規則な増生を示す.細胞成分は非常に乏しく,腫瘍内には神経組織や島状の脂肪織がある.特殊免疫染色ではビメンチン,CD34,CD99(MIC2)が陽性,alcian blue,β-カテニンが陰性であり,Nuchal-type fibromaと診断した.
  • 山村 和彦, 寺尾 浩, 桐生 美麿, 田中 吏佐, 三ツ木 健二
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2399-2406
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    直腸癌の再発症例に対して新しい抗悪性腫瘍剤であるセツキシマブを投与され薬疹を生じた2症例を経験した.2症例ともに顔面,背部を中心に紅色丘疹を認め,対症療法的にステロイド軟膏外用にて改善を認めた.更に当院にて2009年2月までにセツキシマブを投与された18例に対して薬疹の出現頻度と出現時期を検討した.
  • 豊田 徳子, 岩田 洋平, 臼田 俊和, 加藤 恵子, 山岡 俊文, 小寺 雅也
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2407-2412
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    壊死性筋膜炎は,致死率の高い疾患で,予後の改善には早期診断が重要である.壊死性筋膜炎の診断は特徴的な皮膚所見,試験穿刺所見,画像所見などから総合的に行われるが,近年,血液生化学検査データをもとにしたLRINEC scoreが補助的な診断ツールとして提唱されている.そこで自験例の壊死性筋膜炎9例と蜂窩織炎35例についてretrospectiveに,LRINEC scoreを用いて検討した.その結果,壊死性筋膜炎患者のLRINEC score(平均8.1±1.0点)は蜂窩織炎患者(平均1.7±0.3点)に比較して有意に高値であった.また,壊死性筋膜炎と診断するためのcut off値を6点以上と設定した場合には,LRINEC scoreの感度,特異度はそれぞれ100%,97%と優れたものであった.以上より,LRINEC scoreは壊死性筋膜炎の診断において有用であると考えられた.
  • 前田 修子, 山根 裕美子, 國見 裕子, 高野 藍子, 相原 道子, 池澤 善郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2413-2420
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    当院において2003年4月から2009年3月の6年間に,抗腫瘍薬による皮膚障害を生じ,当科を受診した81例について検討した.患者は男性40人,女性41人,年齢は16歳から81歳(平均60.2歳)であった.原因薬剤では代謝拮抗薬が40例(49.4%)を占め,なかでもフルオロウラシルが15例,デガフル・ギメラシル・オテラシルKが11例と多かったが新しい代謝拮抗薬であるゲムシタビンによるものも8例みられた.その他パクリタキセルやドセタキセルといったタキサン系薬剤が18例,ゲフィチニブ,メシル酸イマチニブ,エルロチニブ,ソラフェニブといった分子標的治療薬が17例みられた.投与から皮疹出現までの期間は平均45日であった.皮疹は播種状紅斑丘疹型(麻疹風疹型)が19例,大豆大くらいまでの紅斑および紅色丘疹が体幹や大腿などに限局してみられたものが15例,acral erythemaが13例,痤瘡型が12例と多くを占めた.ステロイド薬の全身投与は5例に施行されたが,その他の症例では対症療法を行いつつ抗腫瘍薬の治療継続が可能であった.新しい薬剤の開発に伴い頻用される抗腫瘍薬が以前と異なるようになり,抗腫瘍薬による薬疹の多様化がみられた.
速報的小論文
  • 千貫 祐子, 﨑枝 薫, 金子 栄, 中村 千春, 村田 将, 澄川 靖之, 新原 寛之, 吉田 雄一, 東儀 君子, 森田 栄伸
    原稿種別: 速報的小論文
    2010 年 120 巻 12 号 p. 2421-2425
    発行日: 2010/11/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(wheatdependent exercise-induced anaphylaxis:WDEIA)の3人の女性症例を経験した.3人はいずれも,WDEIA発症に先立って,洗顔時に同銘柄の石鹸による洗顔を開始しており,洗顔後に膨疹,鼻汁,くしゃみなどの即時型アレルギー症状を生じていた.石鹸には加水分解小麦が含まれており,生理食塩水で0.1%に希釈した石鹸と,含有されていた加水分解小麦を生理食塩水で100 μg/mlに希釈した溶液を用いてプリックテストを施行したところ,3人とも陽性を示した.3人中2人は負荷試験を行い,WDEIAと確定診断し得た.また,患者血清IgEを用いたウェスタンブロットを施行した結果,3人とも加水分解小麦に反応を示した.以上より,今回経験した3例は,石鹸中の加水分解小麦で感作され,小麦蛋白との交差反応によりWDEIAを発症したものと考えた.
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