著者は第1報で,diethylstilbestrol(DES)投与マウスへpicryl chloride(PCl)を経皮的に感作したところ,十分大きな接触皮膚炎反応を惹起するためにはより多量の抗原の投与が必要であることを報告した.この現象はDESによりマクロファージの異物処理能力が増強され,又,免疫応答を負の方向へ伝達するマクロファージの機能が亢進したために生じたと考えた.第1報ではランゲルハンス細胞の抗原提供能にDESが影響を及ぼす可能性が完全には除外できず,又,塗布されたPClが経皮的に吸収され様々な免疫組織で捕捉されて反応を修飾している可能性も考えられた.そこで,これらの問題点を検討する目的でTNP化細胞を作製し顆粒状抗原としてマウスに投与し,DESが接触皮膚炎反応に如何なる影響を及ぼすか調査した.DES投与マウスにTNP化脾細胞を皮下注射したところ,接触皮膚炎反応は対照群に比較して弱く,CY前処理で反応の強さは対照群と同程度となった.この現象は,DES投与マウスでは接触皮膚炎抑制機構が作動したためと考えられ,PClを経皮的に投与した場合と同じで,少なくともDESが表皮の抗原提供細胞の機能に変化を及ぼしたために生じたのではないかと思われる.又,DESが非免疫マクロファージの機能のみに影響を及ぼすと仮定すると,TNP化表皮細胞による接触皮膚炎感作へは大きな影響を与えないと思われる.しかしながら,ランゲルハンス細胞に富むTNP化表皮細胞を皮下注射した場合も,DESにより接触皮膚炎反応は減弱して観察されたことから,DESにより免疫応答を負の方向へ誘導するマクロファージが存在することが予測された.従って,マウス接触皮膚炎は感作の段階でまずマクロファージ群による反応の強さの調節が行なわれていると考えた.
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