非HIV感染者にみられる免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)をnon-HIV IRISとして捉える概念が提唱され,広く用いられるようになってきている.この概念は,HIV患者の治療中にみられるIRISと同様の病態が,HIVとは無関係の免疫不全状態の回復時にみられる現象で,一見,複雑に見える多くの疾患や病態に当てはめることができる.本稿では,このnon-HIV IRISを重症薬疹である薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome/drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms:DiHS/DRESS)を用いて概説する.DiHS/DRESSの経過中に見られるウィルス再活性化や症状の再燃および治癒後の自己免疫疾患発症などの複雑な病態はnon-HIV IRISそのものであり,non-HIV IRISを理解することが,DiHS/DRESSの理解にも役立つ.また,発症早期の段階でCMV再活性化を予測できるだけでなく,CMVが再活性化しやすい4週前後の好中球リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio:NLR)はCMV再活性化の目安となり得る.これらの結果は,DiHS/DRESSのみならず他のnon-HIV IRISにおいても同様の結果が得られると考えている.
肺を病変の場とする非HIV患者の免疫再構築症候群について,特に呼吸器感染症に着目し,文献検索を実施した.該当したのは,31文献,47症例であった.病原体の内訳は,抗酸菌感染症26例,ヒストプラスマ症9例,アスペルギルス症5例,クリプトコッカス症5例,およびニューモシスチス肺炎2例であった.自験例を紹介するとともに,肺を病変の場とする非HIV免疫再構築症候群の病態,および治療方針について概説した.
従来の皮膚筋炎(DM)の皮膚所見に角化性丘疹を有するDMを2例経験した.皮膚病理所見は2症例ともにcolumnar dyskeratosisを認めた.個細胞壊死,基底層の空胞変性,真皮浅層にメラノファージ,真皮浅層の血管拡張,血管周囲のリンパ球浸潤,ムチンの沈着がみられた.特徴的な皮膚臨床像および病理所見からWong-type DMと診断したが,自験例のように従来のDMの所見に角化性丘疹がみられた際,Wong丘疹のように呼称し,DMの皮膚所見の一つとしてとらえるのが良いのではないかと考えた.
局所免疫療法は円形脱毛症に対して最も推奨度の高い治療のひとつとして日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインのみならず海外のガイドラインでも採り上げられている.しかしながら本邦では手技が保険収載されていないこと,治療に用いるハプテンなどが医薬品として定義されていないことが課題である.本治療を,2016年改正医療法施行規則に定められた「高難度新規医療技術等」として香川大学医学部附属病院の評価委員会に申請,承認を受けた.一連の手続を紹介し,本治療のさらなる普及の足がかりとなることを期待する.