表在性真菌症では,部位や年齢によって主たる原因真菌が異なる.頭部・顔面・体部では,20歳以上ではTrichophyton(T.)rubrumだが,0歳~9歳ではMycrosporum(M.)canis,10歳~19歳では,T. tonsuransである.また,M. canisは,頭部・顔・体部白癬では10歳以上でも1~2割程度検出される.それ以外の白癬では,年齢にかかわらずT. rubrumが最も多い.ただ,その傾向は,年代によって変化してきている.深在性真菌症では,免疫抑制状態に基づくとされる黒色菌糸症や皮膚クリプトコッカス症は増加傾向であり,免疫抑制状態に左右されないスポロトリコーシスや黒色分芽菌症は減少傾向である.近年菌名の変更が行われており,T. mentagrophytesがT. interdigitale,Sporothrix(S.)schenkiiがS. globosaとなっている.
2019年の年末に改訂された新しい皮膚真菌症診療ガイドラインでは,総論に加え各疾患の治療についてのclinical question(CQ)が設定された.皮膚真菌症の大部分を占める白癬は部位別にCQが設定され,それぞれの質問に対して推奨度が付与された.誤診を防ぐための治療前の真菌検査は大切であり,手・足白癬,体部・股部白癬の治療の中心は外用,爪白癬,頭部白癬の治療の中心は内服となる.
カンジダは消化管や粘膜,皮膚に常在する真菌であるが,過剰に増殖するとカンジダ症を発症させる.鏡検検査により診断を確定すれば,抗真菌薬の外用で容易に治療可能である.例外的に爪カンジダや重症の口腔カンジダ症,腟カンジダ症には抗真菌薬の全身投与を行う.癜風,マラセチア毛包炎は脂質要求性の常在真菌であるマラセチアにより発症する.抗真菌薬の外用で治療可能であるが,重症例では内服抗真菌薬の投与を考慮する.
急性蕁麻疹の4例を経験した.症例1は75歳女性で,D-dimerが16.4 μg/mLを示し,血栓形成が危惧されたが,蕁麻疹の治療で治癒した.症例2(37歳男性),症例3(16歳男性),症例4(35歳女性)もD-dimerが19.8 μg/mL,11.7 μg/mL,6.2 μg/mLと高値であったが,可溶性フィブリンを追加測定したところ正常値であったため,血栓形成の可能性は低いと考えた.急性蕁麻疹でみられるD-dimer高値は血栓症が懸念されるが,可溶性フィブリン測定により鑑別できる可能性がある.
75歳,男性.肛門周囲の紅斑があり,病理組織でPaget細胞を認めた.肛門管に病変がなく皮膚原発のPaget病として手術したが肛門側の断端にPaget細胞あり.免疫染色でCK7(+),CK20(+),GCDFP15(-),CDX2(+)であった.6年後に肛門管の粘液癌が判明し腹会陰式直腸切断術を施行した.肛門腺由来癌は肛門粘膜表面には癌組織がほとんど見られないという特徴や上記の免疫染色結果から当初より肛門腺由来の肛門管癌による二次性Paget病であったと考えた.Paget病変は早期の肛門管癌から生じうるため,免疫染色は肛囲Paget病が皮膚原発か,肛門管癌によるものかの鑑別手段になると考えた.
41歳,白人男性.初診7年前に左背部の褐色斑を自覚,徐々に隆起.左背部に12×7 mm大の紡錘形の褐色斑とその中央に7 mm大のドーム状褐色結節.ダーモスコピーで色素斑は辺縁にstreaksを伴うglobular pattern,結節は青褐色のhomogeneous pattern.病理組織学的所見で真皮上層から網状層にかけて紡錘形の母斑細胞様細胞あり,maturationなし.β-catenin免疫染色で腫瘍細胞の細胞質・核に陽性で,deep penetrating nevus(DPN)と診断.