毛嚢(包)と脂腺は相互に密接な関連を有し,両者は一つの単位ないし構成物として毛嚢脂腺系pilosebaceous system or unitといわれている.それで20年程前から脂漏,脂腺について研究してきたわれわれが,毛嚢を研究課題とするに至ったのは当然である.昭和36年に始めた脂腺と毛嚢との形態学的機能的関連性の追求が最初である.その後病的現象としての円形脱毛症その他の脱毛症を中心に研究を進めてきたが,それは臨床的な面もさることながら,毛生物学的な面からの解明を指向したものである.今回は従来の成績を一部入れながら,最近行なった当教室の実験成績をもとにして,私自身の考察を加え,毛の成長の機序の一端,それの障害としての脱毛の病理機転などについて,主として形態学的生理学的な面からまとめた.なお,毛・毛嚢自身の微細構造,角化機転にはふれず,なるべく広く理解されるように記述する.