表皮の創傷治癒過程の細胞動態を,hairless mouseの背部皮膚に約4mm大の類円形創傷を作製し,Bro-modeoxyuridine(BrdU)で標識後epidermal sheetを作成し抗BrdUモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に染色する方法で平面二次元的に検討した.同時にcyclic AMPの誘導体であるDibutyryl cyclicAMP(DBcAMP)を3%含有する軟膏の創傷治療過程における効果を検討した.再上皮化部でのBrdU-labeling index(BrdU-LI)は基剤塗布群,未処置群ともに非創傷部より高値であったが,2日目以降で徐々に減少傾向を示した.DBcAMP塗布群は2日目より高値を示し5日目にピークに達した後,徐々に減少傾向を示した.2日目から9日目の経過中,他2群に比べいずれも高値であったが,特に2日目から5日目では有意に高値であった.また,創傷周辺部では,開始後2,3日目ではDBcCMP軟膏塗布群は他2群に比べ有意に高値であったが,その後は減少傾向を認めすべての群の間での有意差は見られなかった.DBcAMPは,創傷において表皮細胞の増殖の促進により,創傷治癒を促進する作用を有するものと考えられた.以上,創傷治癒における細胞増殖能を検討する方法として,epidermal sheetを用いた今回の方法は,広範囲かつ多くの細胞を対象としているため,細胞動態の経時的な変化をより詳細にとらえることができ,また定量的評価ができるため有用であると思われた.
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