日本皮膚科学会雑誌
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108 巻, 14 号
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  • 鳥居 秀嗣
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1939-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    ランゲルハンス細胞は表皮に存在する抗原提示細胞で,形態学的には樹状を呈している.この細胞は骨髄幹細胞から分化して表皮に至り,まずは表皮における監視役としての働きをする.そして何らかの抗原刺激を受けた後は,表皮より遊走を始め,最終的に局所のリンパ節に至り,T細胞に対して抗原提示を行う.この非常に動的な細胞の起源,分化,遊走及びその機能制御などについて最近急速に解析が進んでいる.ランゲルハンス細胞の前駆細胞はCD34陽性細胞であり,GM-CSF,TNF-αやTGF-β1他の影響を受けてCD1a陽性でバーベック顆粒を有するランゲルハンス細胞へと分化する.そしてその表皮からの遊走に関しては,TNF-αやIL-1βが重要であることが明かにされてきている.さらに最近,ランゲルハンス細胞が解剖学的に神経末端と近い関係にあり,さらに神経末端から放出される神経ペプチドがランゲルハンス細胞の機能制御に関与していることが報告されたが,この機能制御にはIL-10をはじめとしたサイトカインがその仲介として働いていることが判明した.又同時に,ランゲルハンス細胞からはIL-6他の複数の神経栄養因子が産生されており,これによりランゲルハンス細胞は神経に対して何らかの働きかけをしているものと推定された.最後にランゲルハンス細胞の機能解析の有効な手段として,この細胞の株化の試みが盛んに行われているが,最近新生児マウス表皮より形態的及び機能的にランゲルハンス細胞類似の細胞株が確立され,ランゲルハンス細胞研究に非常に有用なモデルと期待されている.
  • 藤澤 崇行, 原 典昭, 山蔭 明生, 山崎 雙次
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1945-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症(以下PSS)患者80例の下口唇粘膜より小唾液腺生検を施行し,シェーグレン症候群(以下SjS)との合併症などにつき検討した.1)PSS患者80例中,厚生省のSjS診断基準を満足する症例は36例(45%),自覚的に乾燥症状を欠く潜在性SjS(subclinical SjS,以下sub. SjS)は15例(18.8%),SjSが認められない症例は29例(36.2%)であった.PSSの病型別では,limited type(以下L型)はSjSは53例中28例(52.8%)に認められ,diffuse type(以下D型)の27例中8例(29.6%)に比してSjSの合併率が高い傾向がみられた.2)自覚的に何らかの乾燥症状が認められた症例は80例中39例で,うち24例は眼・口腔共に,13例は口腔のみ,2例は眼のみであった.一方,他覚的に乾燥性角結膜炎は78例中27例(34.6%),sialography検査では68例中29例(42.6%)に陽性所見がみられた.また免疫学的に抗SS-A抗体は80例中11例(13.8%)に陽性であり,いずれもSjS群およびsub. SjS群に属する症例であった.なお抗SS-B抗体は80例全例で陰性であった.3)80例中30例(37.5%)に小唾液腺生検で組織学的に同一小葉内の導管周囲に50個以上の炎症性細胞浸潤が認められ,うちL型は53例中23例(43.4%),D型は27例中7例(25.9%)であった.また小唾液腺小葉周囲に中等度および高度に硬化性病変が認めれらたものは80例中39例(48.8%)で,うちL型は53例中16例(30.2%),D型は27例中23例(85.2%)であった.なお免疫組織化学的所見で浸潤リンパ球は主にCD4陽性αβT細胞であった.4)小唾液腺生検所見の経時的変化を6例で検討した.1例は2度の生検所見がいずれもH3であったが,当初乾燥症状は認められず,9年後の2回目生検時には乾燥症状が出現していた.しかし他の5例は自覚症状および生検所見に明らかな経時的変化は見られなかった.PSS患者では,従来考えられていた以上にSjSを伴うことが多く,またPSSにおける小唾液腺生検はSjSの合併を比較的容易に確認することができ,同時に粘膜の硬化性病変の有無,程度を知ることができる有用な手段と考えられた.
  • 石和 万美子
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1955-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    横浜市立大学医学部附属病院において骨髄移植および末梢血幹細胞移植後に生じた急性GVHD患者皮膚15例18検体,慢性GVHD患者皮膚3例においてTUNEL法を用いた組織化学的標識法により表皮角化細胞のアポトーシスを検討した.急性GVHDでは15例中6例に表皮内にアポトーシス細胞が認められた.これは表皮細胞の障害が強くなるほど多く認められ,組織重症度の指標になりうることが示唆された.慢性GVHDではアポトーシス細胞は認められなかった.急性GVHDにおいては表皮細胞以外の細胞にもアポトーシス細胞が認められたが,それらの細胞にはT細胞が含まれていることがTUNEL法と抗CD3抗体を用いた免疫組織化学との二重染色により証明された.T細胞のアポトーシスと組織重症度との間には関連性は認められなかった.
  • 梅澤 慶紀, 大井 綱郎, 古賀 道之
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1965-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬に対する治療薬として,免疫抑制剤であるシクロスポリン(CYA)の有効性はすでに認められている.しかし,一方で肝障害,腎障害などの副作用の面で注意を要する薬剤であり,副作用予防のため可能な限り低用量で内服治療されることが必要である.尋常性乾癬患者に対し,通常CYAの内服方法は臓器移植と同じ1日2回分割内服法が行われている.今回,ステロイド外用療法を併用し,CYAの低用量内服法として,1.5mg/kg 1日1回内服法を試み,3.0mg/kg 1日2回分割内服法と比較した.対象は1.5mg/kg 1日1回内服群:10名,3.0mg/kg 1日2回分割内服群:11名とし,それぞれCYAを同量で8週間継続し,治療前後のPASIスコアの比較により,治療効果を判定した.その結果は,1.5mg/kg 1日1回内服群では平均改善率:81.1%,3.0mg/kg 1日2回分割内服群では,82.3%であった.このことから,1.5mg/kg 1日1回内服法は,3.0mg/kg 1日2回分割内服法と比べほぼ同程度の治療効果が得られるものと判断した.1.5mg/kg 1日1回内服法はCYA低用量内服法の1つとして試みて良い方法と思われ,乾癬を含む皮膚疾患に対するCYA療法は,臓器移植で行われる内服方法にとらわれず,より適切な内服方法を模索すべきものと考えられた.
  • 高松 由佳, 八田 尚人, 森 俊典, 坂井 秀彰, 高田 実, 竹原 和彦
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1971-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    66歳男性にみられた成人発症の皮膚限局型肥満細胞症(色素性蕁麻疹)を報告した.体幹および大腿にDarier徴候陽性を示す米粒大褐色局面が多数存在し,皮膚生検標本で乳頭層と真皮上層に密な肥満細胞の浸潤を認めた.免疫組織学的に浸潤肥満細胞はトリプターゼとチマーゼがともに陽性であり,TC型の肥満細胞と考えられた.血漿ヒスタミン値は上昇,血清stem cell factor値は正常範囲内であった.全身検索では皮膚以外の病変は認められなかった.病変部皮膚mRNAのc-kit遺伝子のシークエンス検索では最近報告されたAsp 816 Val点突然変異は認められなかった.
  • 兼古 理恵, 斎藤 和哉, 嵯峨 賢次, 杉山 貞夫, 神保 孝一, 下田 久美子
    1998 年 108 巻 14 号 p. 1977-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    Neurofibromatosis 1を伴わずに発症したsolitary cutaneous malignant schwannomaを検討し,免疫組織化学的,電顕的検索を行ったので報告する.症例は68歳男性.左前胸部に50×26×10mmの皮下腫瘤が存在した.大胸筋の一部を含めて切除した.腫瘍を構成する細胞は紡錐形で束をなして錯綜し,抗S-100α抗体陽性,抗S-100β抗体陰性,抗NSE抗体陽性,抗vimentin抗体陽性であった.電顕的には核小体およびヘテロクロマチンが発達し,核の異型性がつよく,一部の細胞では基底膜構造の部分的消失を認めた.また,p53蛋白抗体CM1染色は陰性,p53のdown regulatorであるmdm2蛋白に対するMDM2抗体染色は陽性であった.malignant schwannomaの発症において,他のsoft tissue sarcomaと同様に,発癌遺伝子であるp53が関与している可能性が示唆された.
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