全国の皮膚科専門医研修施設を対象として,2005年~2007年の3年間に経験された Stevens-Johnson syndrome(SJS)ならびにtoxic epidermal necrolysis(TEN)について調査登録票による疫学調査を行った.SJS 258例,TEN 112例,合計370例の調査登録票が回収された.人口100万人あたりの年間の発症頻度はSJSが3.1人,TENが1.3人で合わせて4.4人と算出された.SJS:TENの比は2.3:1であった.SJS,TENともに30歳代に小ピークが,60歳代に最大のピークがあった.男女比はSJSで1:1.14,TENでは1:0.95であった.死亡率はSJSが3%,TENが19%であった.SJS,TENとも被疑薬は抗菌薬等と解熱鎮痛消炎薬が最も多く,次いで抗てんかん薬,循環器疾患治療薬が上位を占めた.被疑薬開始日から皮疹出現までの期間は抗てんかん薬が抗菌薬等より有意に長かった.重症度スコアの平均値はSJSで5.0±2.0,TENで8.3±2.7で両群間には有意差があった.眼病変はTENでは77%に対し,SJSでは26%と大差があった.血痂を伴う口唇びらん,口腔内の広範囲血痂を伴うびらん,陰部びらん,呼吸器障害など粘膜症状の頻度はいずれもSJSよりTENにおいて統計学的に有意に高かった.組織学的にもSJSはTENよりアポトーシスや表皮全層性壊死の頻度が有意に低いことを考え合わせると,本調査ではSJSの中に重症多形紅斑(erythema multiforme major: EM major)が紛れ込んでいる可能性が考えられた.死亡例解析結果から死亡例は年齢が高い,被疑薬は抗菌薬等の割合が高い,皮疹より発熱が先行する症例が多い,重症度スコアが高い,感染症合併,肝機能障害,末梢血異常,腎機能障害,呼吸器障害,循環器障害などの他臓器障害が多い,単独療法より,集学的治療がなされていたなどの傾向があった.
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