近年,梅毒が急増している.当初は男性同性愛者に増加していると考えられていたが,男性のみならず女性の梅毒も増加している.また新規HIV感染者数もここ数年横ばいの状態であり減少するには至っていない.梅毒は皮膚科を受診する場合が多く,またHIV感染症も皮膚科で指摘されることはまれではない.梅毒およびHIV/AIDSの皮膚症状に関して診断・治療を含めて概説する.
汗腺由来の悪性腫瘍は頻度が少ないため,各腫瘍の疫学的事項の情報は十分ではなく,予後に関する情報は少なく,治療方針は確立されていない.そこで,1996年から2015年までの20年間に群馬大学医学部附属病院皮膚科で組織診断した乳房外Paget病を除く汗腺癌36例を臨床的に検討した.患者の年齢は29歳から91歳,男女比は1:1で性差はなかった.発症部位は躯幹が15例と最多であり,足7例,下肢6例,その他の部位8例であった.全経過中,所属リンパ節転移を15例,遠隔転移を9例に認め,原病死は9例であった.
汗腺系腫瘍は臨床的特徴に乏しく,類似の組織像を呈する症例に様々な病名が提唱され,また同一病変内においても複数の組織型が混在する症例もあり,その分類は難しい.しかし組織型によって臨床経過や予後に違いがあることが今回の検討から示唆された.汗腺癌の治療方針の確立に向けて多施設共同の前向き臨床研究が必要である.
20歳男性.生下時より尾骨部に皮膚常色の隆起があり,5年前に腫瘤に気づいた.臀裂に沿って60×30 mmの淡紅色腫瘤あり.骨盤部CTで尾骨が前方に約90度屈曲していた.さらに仙尾部の生理的な後弯が仙骨下1/2から認められず,屈曲部以外はほぼ直線状を呈していた.Coccygeal padと診断し全身麻酔下に腫瘍を切除した.過去の報告例を検討したところ自験例のように仙尾部の後弯が仙骨下部で欠如し直線状になっていた症例が43.5%にみられ,仙尾部の生理的弯曲異常が発症に関与する可能性があると考えた.
保存的治療のみでは期待した治療効果が望まれないと判断したケロイドの5症例に対して,早期に手術療法と術後補助療法を施行した.5症例とも術後の経過は良好であり,患者の高い満足度を得ることができた.保存的治療はケロイドに対して最初に施行される標準的治療であるが,治療効果が不十分なまま徒に長期間が過ぎてしまう危険性がある.保存的治療のみでは十分な治療効果が期待できないケロイド症例には,手術療法の限界を見極めた上で,早い時期から手術療法と術後補助療法の併用に踏み切ることが肝要であると考える.