著者はサルコイドージス(S.)及びサルコイドージス様反応(S.R.)を概論したのち,S.自験例,Kveim反応,皮膚結核症及び癩におけるS.R.,BCG,結核生菌及び死菌接種,松花粉による実験的S.R.を主として病理組織学的に検索した.1.S.におけるリンパ節の類上皮細胞肉芽腫は組織学的に均一性を示し,嗜銀線維の所見においてもある程度一定のものがあり単位肉芽腫はそれを囲続する嗜銀線維により明確に境界される.線維は肉芽腫の内部へ多少は走入するが,その中心には欠如する.しかしてS.皮疹の組織像においてもこれとほぼ同一の所見を得た.2.Kveim反応にも類上皮細胞肉芽腫を認めたが,それは不均一性であり,嗜銀線維も不規則な増生と,肉芽腫内への均等な樹枝状走入を示した.3.皮膚結核症及び癩にある程度S.に近い,S.R.の所見を一部に見たが,皮膚結核症の尋常性狼瘡,顔面播種状粟粒性狼瘡及びBazin硬結性紅斑では結核特有の壊死性変化が併存する.これら各症の類上皮細胞肉芽腫はいずれも不均一性,嗜銀線維は肉芽腫内に均等に樹枝状増生するのが目立つた.結核様癩では類上皮細胞肉芽腫の類上皮細胞は萎縮して,細胞間隙が目立ち,嗜銀線維が均等,樹枝状に増生するのを認めた.4.BCGワクチン,結核生菌及び死菌による実験的S.R.はいずれも極めて低率ながらこれを惹起さすことができたが,BCGによる類上皮細胞肉芽腫はS.のそれに類似して,比較的著明なものであつた.しかし他のものではさほど著明ではなく,また嗜銀線維はBCG,結核生,死菌のいずれの接種実験でもS.におけると異なり,中心に線維欠如することなく,均等に網眼を形成し,特にBCG接種によるものは網眼形成が著明であつた.5.松花粉を人体皮膚に接種した局所に,実験例の16例中5例に類上皮細胞肉芽腫を認めたが,特にその嗜銀線維の肉芽腫中心まで走入しない点にS.のそれに類似するものがあつた.杉花粉の実験はすべて陰性であつたこと,及びS.の症例に松花粉をもつてしても類上皮細胞肉芽腫の生じなかつたことを記したい.6.これを要するにS.とKveim反応及びS.R.とは類上皮細胞肉芽腫を主体とする点は同一であるが,病理組織学的に肉芽腫の構造,嗜銀線維のあり方に相違がある.しかしながらKveim反応及びS.R.はS.に附随して検索すべきもので,それはS.発生病理の解明に参考となるものを提供しよう.稿を終るに当り,終始御指導,御校閲賜つた北村包彦教授並びに小嶋理一教授に深甚なる謝意を表し,また研究に際し種々御指導,御便宜をお計り下さつた,本学内科長村教授,病理佐々教授及び内科勝沼助教授に改めて謝意を表します.
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