IL-2(interleukin-2)はT細胞の増殖を促進する重要なサイトカインであり,かつIL-2はICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)を発現増強し,腫瘍免疫に重要な役割を演じている.また,欧米においてIL-2は,単独,或いは化学療法剤との併用で黒色腫患者の治療に使用され,その有効性が報告されているが,評価は一定していない.最近,悪性黒色腫においてIL-2 receptor(IL-2R)が発現されており,更に黒色腫細胞自身がIL-2を産生していることが報告された.今回我々は悪性黒色腫に対するIL-2の影響,IL-2R発現の意義を明らかにするため,悪性黒色腫におけるIL-2Rα鎖,β鎖の発現をin vivo,in vitroで検討した.黒色腫患者原発巣14例,転移巣14例におけるIL-2Rの発現を凍結切片を用い,ABC法(avidin-biotinperoxidase complex method)にて染色した.原発巣におけるIL-2Rは14例中3例,転移巣では14例中6例にて発現されており,転移巣で発現例が多かった.次に3種の培養黒色腫細胞(SK-MEL118,A2058,MM96E)を用い,IL-2Rの発現を調べた.SK-MEL118では約30%,MM96Eで約10%の細胞でIL-2Rの発現が認められたが,A2058では発現が認められなかった.IL-2処理(100IU/ml,24時間)後の培養黒色腫細胞のICAM-1の発現,細胞増殖に与える影響を調べた.今回用いた細胞ではICAM-1の発現はIL-2処理で変化しなかった.各種濃度(1-1,000IU/ml)のIL-2処理後,3H-TdRの取り込みを調べたところ,SK-MEL118ではIL-2の濃度依存性に取り込みの増加,SK-MEL30ではIL-2の濃度依存性に取り込みの減少が認められた.IL-2Rの発現のないA2058では3H-TdR取り込み量は変化しなかった.in vivo,in vitroにおける結果から,腫瘍組織中にはIL-2に反応し,細胞増殖が促進される細胞と,促進されない細胞が混在している可能性が示唆された.IL-2療法施行時には,黒色腫細胞におけるIL-2Rの発現の有無を確認する必要があると考えられた.更に,in vitroで黒色腫細胞にIL-2によるICAM-1の誘導を認めなかったが,臨床的には悪性度の高い黒色腫ほどICAM-1の発現率が高いことが知られており,黒色腫細胞におけるIL-2によるICAM-1の誘導の有無についても今後も検討が必要である.
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