日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
96 巻, 14 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 長谷川 正次, 堀 嘉昭, 向井 秀樹, 衛藤 光
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1619-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    制癌剤の悪性腫瘍に対する制癌効果の増強の目的でbleomycinをliposomeに封入して担Sq-16マウスに腹腔内投与し,非封入bleomycinの制癌効果と比較検討した.その結果,bleomycinはliposomeに封入されることによりSq-16移植部における固型腫瘍の増殖抑制効果は増強され,それに伴い生存日数も延長された.これらの効果は総投与量は同一でも分割して投与回数を多くするほど顕著に認められた.移植部腫瘍内のbleomycin濃度の測定結果より,移植部腫瘍増殖抑制効果と生存日数の延長はliposome内に封入されたbleomycinの徐放性に基づくものと考えられた.また移植部固型腫瘍の外科的摘出後のbleomycin封入liposomeの投与により,リンパ節転移巣の腫瘍増殖抑制によると思われる延命効果が認められたが,これはbleomycinのliposome内封入化によるbleomycinのリンパ節内への取り込みの増加と薬剤の徐放性によるものと考えられた.
  • 川口 俊夫
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1627-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    鳥取大学付属病院皮膚科における昭和56~59年4年間の白癬菌相を報告すると共に,多病型白癬合併例に注目して,統計学的に部位間の関連を検討した.また,全国施設の白癬全体と足白癬のTrichophyton rubrum/Trichophyton mentagrophytes比(以下TR/TM比)を文献的に検討し若干の考察を行なった.その結果,当科における白癬菌相では,1)総分離株639株の内訳はTrichophyton(以下T.) rubrum 475株(74.3%),T. mentagrophytes 130株(20.3%),Microsporum(以下M.) canis 16株(2.5%),Epidermophyton(以下E.) floccosum 5株,M. gypseum 3株,T. violaceum 2株であった.2)M. canisは昭和54年に山陰地方で初めて分離されたが,山陰地方での確実な初感染例は昭和57年に見られた.昭和59年よりM. canisの感染例,特に小児の頭部白癬が増加しているのが目立った.3)TR/TM比は,白癬全体では病型別3.65,患者別3.08であり,足白癬では1.83であった.当大学の過去の白癬菌相に比し,足白癬の最多分離菌はT. mentagrophytesからT. rubrumへと変遷していた.多病型白癬合併例に注目して,統計学的処理により部位間の関連を検討した結果,足と趾爪,手と指爪,顔面と顔面以外の体部が有意に合併しやすいという結果が得られた.足と趾爪の合併は,いわば同一病巣内の白癬であるためと考えられる.手と指爪の合併は,同一病巣内ということだけでなく,足・趾爪が一次病巣で結果的に手と指爪が合併している可能性も強いと思われた.顔面と顔面以外の体部の合併は,体部より顔面への接種,診断の部位的因子,菌学的因子等の多因子が関与しているものと考えた.当大学を含め全国23施設の白癬全体,足白癬のTR/TM比を文献的に検討した結果,全国的に南下するにつれ同比は高くなる傾向が見られた.足白癬は,北海道・東北・北陸地方ではT. mentagrophytesが常に優位ないしその傾向または同等の施設が多いのに対し,関東地方ではT. mentagrophytesが優位であった時期もあるが最近ではT. rubrumが優位を占め,関東以南の地方では沖縄県を除きT. rubrumが優位であった,当大学は関東地方の傾向に似ていた.
  • 安斎 真一, 麻生 和雄
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1639-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    本学で経験した乳房外Paget病11例に対して臨床的・病理組織学的検討を加えた.症例を下床に腺癌をともなう例とともなわない例とに大別した.腺癌をともなう例ではともなわない例よりも予後が悪かった.更に,光顕的にPaget細胞をA,B,C,D型に,電顕的に分泌型・非分泌型・空胞型に分類したところ,腺癌をともなう例ではB型・分泌型が,ともなわない例ではA型・非分泌型が多く観察された.組織化学的にはPaget細胞はPAS・アルシアン青陽性であったが,これは主にA型細胞であった.免疫組織化学的にはPaget細胞は一般にKeratin,CEAが陽性であり,B2-microgloburinは陰性であった.以上より,それぞれのPaget細胞の性格は,A型は粘液癌的性格,B型は腺癌的性格,D型は未分化細胞としての性格をもつものと考えた.
  • 石橋 明, 木村 孔右
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1649-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    両側眉毛部,頤部などに糜爛性腫瘍が多発した46歳男子例を報告した.基礎疾患や免疫学的異常を見出しえず,抗生物質に反応を示し,外科的切除により治癒した.従来pyoderma vegetansの病名で報告されて来た疾患ないしはその類症を,(1)本質的に天疱瘡であり,pyodermaから除外すべきもの,即ちpemphigus vegetans,(2)不健康者の外傷部に生じ,中心治癒,辺縁疣状で,痂皮下には多数の膿瘍を認め,組織学的に表皮の偽癌性増殖と真皮内膿瘍を示すblastomycosis-like pyoderma,(3)顔面開口部,間擦部などに生じる肉芽組織で,組織学的に糜爛性か,または表皮の増殖傾向を有するが,真皮の形質細胞,リンパ球,あるいはまた好酸球の稠密な細胞浸潤が主体をなすdermatitis(pyoderma)vegetans,の3者に分けるMaibachらに則り,pyoderma vegetansと診断された.手でいじる様な物理的刺激あるいは不適切な処理が重要な因子と思われた.
  • 黒川 一郎, 西嶋 摂子, 朝田 康夫
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1655-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    尋常性痤瘡病巣より分離したPropionibacterium acnes(以下P. acnesと略)の抗生物質感受性について当教室の過去15年間の成績を比較検討した.すなわち,1969年,1976年,1982年及び1985年に尋常性痤瘡病巣より分離したP. acnes菌株,それぞれ27,47,84,48株を対象とした.そして,各々の年度別に6,10,6,9剤の薬剤について寒天平板希釈法にて最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行なった成績に基づいて検討した.感受性はおおむねEM,CLDM,ABPC>MINO,DOXY>TCの順に良好であったが,MIC80の比較ではEM,及びABPCに耐性化傾向が認められた.また,MIC 100μg/ml以上の高度耐性菌がEM及びCLDMにおいて認められた.
  • 荒川 謙三
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1661-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    黄色腫病変が成熟するとコレステロールエステルの蓄積が顕著となり,特にオレイン酸コレステロールの占める割合が高くなることが特徴である.そこで,高コレステロール血症家兎に高分子デキストラン硫酸を局注することにより作成した種々の成熟段階にある黄色腫病変を用い,黄色腫組織内におけるコレステロール代謝,特にそのエステル化機序について検討し,次のような結論を得た.1)黄色腫組織内では,局所で合成された脂肪酸はコレステロールのエステル化に利用されるが,遊離脂肪酸の存在下では著明に抑制される.2)レシチンのβ位の脂肪酸がコレステロールのエステル化に利用されるのはごくわずかであり,この際遊離脂肪酸の影響を受けない.3)microsomeに存在するacyl-CoA:cholesterol acyltransferase(ACAT)の活性は,黄色腫が形成される初期の段階に最も高まっており,基質としてパルミチン酸よりもオレイン酸に特異性が高い.以上より,活発にコレステロールエステルを蓄積している黄色腫組織ではコレステロールのエステル化が促進しており,その際lecithin:cholesterol acyltransferaseの作用によるlecithinからの経路よりも,ACATを介して血中の遊離脂肪酸がエステル化に利用される経路が主体である.また,エステル化に利用される遊離脂肪酸はオレイン酸がある程度特異的に利用される.この基質特異性が,黄色腫組織内にオレイン酸コレステロールが顕著に蓄積する因子の1つであると推測されるが,さらに蓄積したコレステロールエステルの分解系を検討する必要がある.
  • 山本 綾子
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1669-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    眼瞼黄色腫患者22名について,臨床検査成績を含め,血漿脂質,血漿リポ蛋白およびリポ蛋白代謝酵素を検討したところ,高脂血症患者は16名,正脂血症患者は6名であった.正脂血症患者では血漿high-density lipoproteins(HDL),HDL-cholesterol,lecithin:cholesterol acyltransferase(LCAT)活性が低値を示し,HDL代謝系の機能低下が示唆された.すなわちHDLによる細胞内cholesterol(ch)除去及び転送作用の低下が,泡沫細胞を生じさせると考えられ,アテローム硬化症と共通する脂質代謝異常が推定された.高脂血症患者は,高low-density lipoproteins(LDL)血症あるいは高LDL+very low-density lipoproteins(VLDL)血症を示し,HDL及びリポ蛋白代謝酵素活性に異常はみられなかった.この所見から,高リポ蛋白血症によってスカベンジャー経路が亢進し,chが蓄積する機序が考えられ,これまでの報告とほぼ一致した.しかし黄色腫が眼瞼に限局して発生する理由は,軽度の脂質代謝異常においても,なんらかの局所性因子が加わることによって,眼瞼に最も容易に黄色腫を生じると考えられた.さらに眼瞼黄色腫の正脂血症患者と高脂血症患者に共通する発症基盤,すなわちchの蓄積と除去のアンバランスが想定された.本症の患者には,DNCB皮膚テストの陽性率の低下がみられ,脂質代謝機能異常が患者の免疫動態に影響を与える可能性も推測された.
  • 大山 勝郎, 植原 俊夫, 野原 稔弘, 野村 茂, 荒尾 龍喜
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1677-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    タバコによる皮膚障害については,タバコ原料工場従事者に皮膚炎が生じた報告例は多いが,タバコ耕作者の報告例は少ない.著者らは,タバコ耕作者にアンケート調査を実施し,150名より回答があった.その結果,タバコにかぶれることを知っている人は多く,タバコによる皮膚炎を起こしたことがあるのは36名で女性に23名と多い.芽がき期や収穫期のタバコに触れる作業が多い時期に多発する.次に,Nicotiana tabacum黄色腫の新鮮葉について,抽出,分離を行った.その結果,TN-1と仮称する化合物が得られ,各種スペクトルにより,化学構造はセンブラン骨格を有するジテルペノイドと判明した.TN-1を用いて,パッチテストを実施し,患者が陽性反応を示し,刺激性よりもアレルギー性皮膚炎が疑わしい.
  • 坪井 良治, 真田 妙子, 松田 和子, 佐藤 壮彦, 矢口 秀男, 小川 秀興
    1986 年 96 巻 14 号 p. 1681-
    発行日: 1986年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    Sporpthrix schenckiiを3種類の培地,即ちサブロー液体培地,BHI液体培地及びyeast carbon baseに窒素源としてアルブミンを添加した液体培地でそれぞれ1週間培養したところ,アルブミン添加培地の培養上清のみよりproteinases活性を認めた.この培養上清は少なくとも2種類のproteinaseを含み,阻害実験から一方は至適pH4.5 のcarboxyl proteinase,他方は至適pH6.0のserine proteinaseである可能性が示唆された.これらのproteinasesはいずれも菌側の侵襲因子として菌の増殖に深く関与しているものと考えられる.
feedback
Top