日本皮膚科学会雑誌
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119 巻, 3 号
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皮膚科セミナリウム 第47回 角化症
  • 須賀 康, 水野 優紀
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第47回 角化症
    2009 年 119 巻 3 号 p. 301-307
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    Netherton症候群(NS)1)2)は1.先天性魚鱗癬に,2.毛髪異常,3.アトピー素因を3徴候とする魚鱗癬症候群のひとつである.本症は常染色体劣性遺伝であり,発生頻度は10~20万人に1人未満3)とされていたが,近年では非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症,時にはアトピー性皮膚炎と診断を受けている患者の中にも毛髪異常などの症状が目立たない本疾患の患者が混在していることが明らかになってきた4)~6).また,NSは角層が過剰に剝離する病態を呈しており7)~9),他の遺伝性角化症以上に表皮バリア機能の障害が顕著であり,この病態生理に基づいた治療,スキンケアがなされるべきである.
  • 乃村 俊史
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第47回 角化症
    2009 年 119 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    尋常性魚鱗癬は,四肢伸側を中心とした鱗屑とドライスキン,そして掌蹠の皮膚紋理増強を特徴とする,最も頻度の高い遺伝性魚鱗癬である.最近,本症はフィラグリン遺伝子変異により発症することが明らかにされた.フィラグリンは,ケラチン線維を凝集させることで角層の形成に働くほか,その分解産物が天然保湿因子として働くため,皮膚バリア機能の維持と保湿に重要なタンパク質である.従って,フィラグリン遺伝子の変異によりフィラグリンの産生が減少すると皮膚バリア機能の破綻とドライスキンをきたすようになる.本症の遺伝形式はautosomal semidominantで,homozygoteやcompound heterozygoteの患者はheterozygoteの患者と比べ,より重症の臨床像を呈する.また,興味深いことに,フィラグリン遺伝子変異はアトピー性皮膚炎の重要な発症因子であることも示された.現在のところ,本症の治療は対症療法が主体であるが,病因が同定されたことで,フィラグリンをターゲットとした新規治療法の開発が精力的に進められており,近い将来の臨床応用が期待される.
  • 濱田 尚宏
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第47回 角化症
    2009 年 119 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    Hailey-Hailey病の原因はゴルジ体膜上のhuman secretory pathway Ca2+/Mn2+-ATPase protein 1(SPCA1)というカルシウムポンプをコードする遺伝子(ATP2C1)であることが近年明らかにされた.変異により生成されるタンパク質が一定の量以下になると皮疹が出現するというhaploinsufficiencyが発症に関与すると考えられている.各症例におけるATP2C1遺伝子変異を蓄積したり,SPCA1の発現量を左右する他の分子を実験的に検討したりするなどして,本疾患の病態は少しずつ明らかにされてきている.
原著
  • 三橋 真理子, 山本 貴子, 原 弘之, 長谷川 慶, 桑原 功光, 照井 正
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    24歳男性.1歳時に巣状分節性糸球体硬化症を発症し,13歳時に腹膜透析を導入している.脊髄馬尾腫瘍の経過観察のため,ガドリニウム(Gd)造影剤を用いてMRI検査を施行した6日後より突然,両前腕と下肢の浮腫,硬化が出現した.皮膚の硬化は急速に進行し,運動制限,膝関節痛を自覚するようになった.現症:両前腕,両大腿から下腿にかけて,境界明瞭な熱感を伴う黄褐色の硬いなめし皮様の局面を認めた.局面内には,頂点に黒色ないし灰白色の痂皮を付す小丘疹が多発していた.皮膚生検では,真皮から皮下脂肪織にかけて膠原線維の膨化,弾性線維の断裂,ムチンの沈着,線維芽細胞様細胞の増生,CD68,凝固因子XIIIa陽性の樹状細胞を認めた.Nephrogenic fibrosing dermopathy(腎性線維化性皮膚症)と診断した.さらに真皮浅層に裂隙を認め,その内部に石灰沈着を認めた.さらに一部では経表皮的石灰排泄像を伴っていた.
  • 福本 隆也, 安斎 眞一, 木村 鉄宣
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 3 号 p. 327-335
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    筋周皮腫(myopericytoma)は,1998年にGranterらが記述した,主に成人の四肢の末梢側の皮下に好発する比較的新しい概念の良性腫瘍である.今回,我々は10例の筋周皮腫を経験し,臨床病理学的に検討するとともにその疾患概念について考察した.男女比は8:2と男性に多く,平均年齢は69歳と高齢者に多かった.すべて単発例で,8例が四肢遠位部に発生していたが,下顎と肩に発生した例が1例ずつあった.多くの例(8例)で痛みを伴っていた.病理組織像では,特徴的な血管周囲性の同心円状の短紡錐形細胞の増加の他に,いわゆる血管周皮細胞腫様パターン(hemangiopericytomatous pattern)が5例にみられ,筋線維腫(myofibroma)に類似する像が3例にあった.また,血管平滑筋腫(angioleiomyoma)に類似する部位をもつものが3例,グロムス細胞に類似した細胞が部分的にみられる例が2例あった.免疫組織化学的にはα-smooth muscle actinが,調べえた6例全例で紡錘形細胞にびまん性に陽性に染色された.CD34は6例中5例で部分的に陽性で,desmin,S-100蛋白は陰性であった.筋周皮腫は,筋線維腫(症),グロムス腫瘍,血管平滑筋腫と形態学的な類似性があり,これらの疾患と連続的なスペクトラムを形成する良性腫瘍であると考えた.
  • 内 小保理, 内 博史, 小河 祥子, 師井 洋一, 古江 増隆, 樗木 晶子
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    近年,患者のQOL評価の重要性が認識され,皮膚科分野の臨床研究でもSkindexやDLQIなど皮膚疾患特異的QOL評価尺度が使われる機会が増えてきているが,性差・年齢・疾患がQOLへ及ぼす影響を包括的に調査した本邦での報告はない.そこで九州大学皮膚科初診患者 1,202名から回収したSkindex16調査票を用いて検討した.性別では女性,年齢では若年,疾患群別では湿疹皮膚炎群,蕁麻疹・痒疹・皮膚瘙痒症,角化症,付属器疾患群のQOLが低下している傾向がみられた.
  • 佐藤 惠美, 小松 成綱, 堀 仁子, 本間 大, 高橋 英俊, 山本 明美, 飯塚 一
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2014/11/28
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    58歳,女性.皮膚筋炎の診断でプレドニゾロン6 mg/日内服中,左内眼角に紫紅色斑が出現した.0.1%タクロリムス軟膏の外用に反応せず,徐々に頬部まで拡大した.病理組織学的にDLEに合致する所見が得られたが,真皮の膠原線維間および血管周囲に泡沫細胞の浸潤を認めた.泡沫細胞は胞体内に大小不同の多数の顆粒を有し,これらは蛍光顕微鏡下でyellow-orangeの自家蛍光を発しており,リポフスチンの沈着が示唆された.免疫血清学的検査で抗RNP抗体が陽性を示し,他の臨床所見もあわせ自験例をMCTDに生じた黄色腫型反応を伴ったDLE型皮疹と考えた.病理組織学的に黄色腫反応を伴うことは稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
学会抄録
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