日本人は清潔志向が強く過剰洗浄が多いとされてきたが,心身が健全でないと洗浄行為も行えず新たな皮膚病変を生じる.適切な洗浄には各自の皮膚能力に応じて臨機応変に変えていく必要がある.治療薬を落とすのにも洗浄行為は必要であるが,製品の刺激やアレルギーで皮膚病変が難治になっている可能性もある.適切な治療・生活指導にはパッチテスト(PT)を行うと,検査結果により患者の生活の質改善が期待できることがある.
皮膚の最外層にある角層の水分を適度に保つこと(保湿)は,生命活動の維持や健康かつ美しい肌を保つことにおいて重要である.この主要なメカニズムとして天然保湿因子(NMF)の水を保持する働きと細胞間脂質などによるバリア機能が挙げられる.保湿化粧品には,これらに対応する保湿剤としてヒューメクタントとエモリエントが配合されている.また,保湿化粧品は,継続して使用することで効果を発揮することから,消費者の嗜好に合わせた心地良い使用感も大切である.
経年的な皮膚生理機能の変化によって皮膚は乾燥した状態になりやすい.保湿外用薬の使用は皮膚に一時的な潤いを与えるだけではなく,皮膚恒常性の維持に有用である.保湿外用剤は適宜十分な量を塗布することが大切だ.ウェットラップ等による「持続的な保湿」はアトピー性皮膚炎や結節性痒疹の改善に有効であることが知られている.慢性の経過を経た痒疹や苔癬化病変が保湿外用で治癒する例も経験する.
本稿では保湿ケアのコツと保湿のもたらす効果について概説する.
レセプトデータベースを用いて2020年の集簇性痤瘡の患者数と患者背景,診療科,処方薬について調査した.分析対象者8,521,265人中,集簇性痤瘡患者は2,726人で,有病率0.032%,本邦の推計患者数は29,171人であった.内服抗菌薬の処方は72.3%,うち年間91日以上が10.3%であった.一方,外用抗菌薬の処方は70.4%で,うち年間101 g以上が6.3%であった.診療科は一般外科が19.5%であった.治療に難渋し,抗菌薬の長期投与や外科的処置が行われている現状が示唆された.
53歳女性.初診3年前に出現した外陰の結節が1年前より急速に増大し受診した.右大陰唇に10×8×8 cmの懸垂性腫瘤があり,全麻下に摘出した.腫瘍は境界明瞭で病理組織像では紡錘形から類円形の腫瘍細胞が豊富な血管と結合織成分を伴って増殖しており,細胞密度の高い部分と疎な部分が混在した.臨床・組織所見よりangiomyofibroblastoma(AMFB)と診断した.本症と局所再発の多いaggressive angiomyxomaの鑑別は重要であり,AMFB国内外報告215例の検討を加えて報告した.
BRAF+MEK阻害薬の併用療法は,メラノーマ治療において有効であるが,発熱を生じることが知られている.本総説論文では,BRAF+MEK阻害薬の臨床試験で報告されている発熱の特徴を紹介するとともに,発熱に対するマネジメント方法について概説し,実臨床において実践する際のポイントを示した.今回取り上げた発熱を含め実臨床において個々のメラノーマ患者の副作用マネジメントを適切に実践しながら,BRAF+MEK阻害薬の効果を最大化することによって,メラノーマの治療成績がさらに向上すると期待できる.