掌蹠膿疱症はいわゆるcommon diseaseであるにも関わらず,実際の臨床現場では,新しい治療工夫もなければ,病態に関する検討もなかったため「見捨てられた疾患」というイメージが付きまとっていた.2018年12月に世界初・本邦発の掌蹠膿疱症に対する生物学的製剤が承認され,本疾患に対する世界的な注目度が跳ね上がった.我々日本の皮膚科医が,世界に先駆けてこの製剤をどのように使用し育薬していくかを考えていく上でも,改めて本疾患に対する理解を深めることは重要である.
壊疽性膿皮症は,下腿に好発する増殖性・壊疽性の潰瘍で,周囲は軽く堤防状に隆起し,浮腫を伴う.潰瘍型が大半を占め,他に膿疱型,水疱型,表在(増殖)型があり,さらに特殊なものとしてストーマ周囲に生じるタイプがある.基礎疾患には,関節リウマチ,炎症性腸疾患,造血系悪性腫瘍,大動脈炎症候群などがあるが,本邦では潰瘍性大腸炎が最も多い.些細な外的刺激,外傷によって誘発されることをpathergyといい,20~30%程度にみられる.好中球性皮膚症に含まれ,眼症状,関節症状,内臓(肺,肝臓,腎臓,脾臓)の無菌性膿瘍などの皮膚外症状を合併することもある.治療は副腎皮質ステロイド薬の全身投与が第一選択である.
68歳,女性.主訴:頭部のびまん性脱毛.既往歴:高コルチゾール血症.初診3カ月前より脱毛が出現した.加齢による脱毛と自己判断し,1カ月前に増毛術を受けたが,脱毛が進行するため来院した.初診時,頭部全体にびまん性の脱毛,易脱毛,黒点があり,PAS染色で毛包内に菌体成分を認めた.全身にも白癬の病変を認め,真菌培養,DNA sequenceからTrichophyton rubrumによる汎発性白癬と診断した.高コルチゾール血症に伴う細胞性免疫の低下により足白癬の汎発化を認めた.汎発性白癬は内分泌疾患に伴う場合もあり鑑別疾患に含めるべきである.
38歳,男性.尋常性乾癬治療中に全身に緊満性水疱が出現した.粘膜症状は認めなかった.蛍光抗体直接法で基底膜部にIgGとC3沈着,正常ヒト皮膚切片を基質とした蛍光抗体間接法(IIF)で抗表皮基底膜部抗体陽性,1M食塩水剝離皮膚を基質としたIIFで真皮側基底膜優位にIgG沈着,リコンビナントラミニン332を用いた免疫ブロット法(IgG)でα3サブユニット(165 kDa)に陽性を示した.ラミニン332自己抗体を有した類天疱瘡と診断しcyclosporine A内服を開始し軽快した.乾癬に合併したラミニン332自己抗体を有する類天疱瘡は非常にまれと考えられるため報告する.