日本皮膚科学会雑誌
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101 巻, 1 号
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  • 定本 靖司, 荒瀬 誠治, 加藤 昭二, 藤江 建志, 武田 克之
    1991 年 101 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    ヒトの抜去毛包および外科的摘出毛包をコラーゲン・ゲル内に包埋し,毛包細胞を培養した.毛球を付着しない抜去毛包では毛包細胞が棘状あるいはアメーバー状に増殖したが,毛球を付着する毛包では2つの特徴的な増殖様式がみられた.1つは毛乳頭が縮小し毛球部より圧出されると同時に毛球下部より著明な上皮系細胞の増殖が毛包と反対方向におこり,漸次,包埋毛包と対称的に毛包様組織を構築し,その中心部に毛類似の角化物を形成した.他の1つは,毛乳頭が毛球部より圧出されず,毛幹の伸長と毛包の新生をみる増殖様式であった.しかし,毛乳頭が毛母部より離れると同時に毛幹の伸長は停止し,それ以降は外毛根鞘細胞の周辺部への増殖のみを認めた.毛包のゲル内包埋培養は3次元での器官培養として有用と思われた.
  • 菊池 りか
    1991 年 101 巻 1 号 p. 13-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    ヒトの増殖期にある細胞の核内抗原を認識するKi-67モノクローナル抗体を用いて正常頭皮の成長期毛包における増殖期細胞の局在を免疫組織化学的に検討したところ,従来の〔3H〕チミジンを用いたautoradiography法やチミジンのアナログであるBrdU(bromodeoxyuridine)に対するモノクローナル抗体を用いた検討と同様の陽性細胞の分布を認めたが,labeling indexはより高い結果を得た.すなわち毛乳頭側より数層までの毛母細胞と外毛根鞘細胞に散在性に陽性細胞を認め,そのlabeling indexは従来の方法の1.3~2.1倍であった.さらに脱毛症患者の毛包で検討したところ,全頭脱毛症患者では陽性細胞はほとんど認められず,円形脱毛症患者では陽性細胞の認められた症例の方が予後良好であったことから,本法は脱毛症の予後判定にも有用であると思われた.
  • 宮澤 順子, 宋 玉如, 高森 建二
    1991 年 101 巻 1 号 p. 21-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    マウス生長期毛球部の抽出液をモルモット背部に皮内注射したところ,好中球及びリンパ球を主体とする小円形細胞の真皮への浸潤が認められた.好中球の浸潤は3時間後に最大となり以後急激に減少し,24~48時間後にはほぼ消失した.一方リンパ球の浸潤は3時間後に最大となり,そのpeakは12時間続き,48時間後にはほぼ消失した.好中球の浸潤はこの抽出液を100℃,10分間加熱処理することにより殆ど抑制された.Trypsin処理では,無処理抽出液の約半分の浸潤を示したが,その値は試薬コントロールとほぼ同程度であった.一方,リンパ球の浸潤は,これら加熱及びTrypsin処理によっては殆ど影響を受けなかった.これらの結果は,我々が先に報告したin vitroでの実験結果とほぼ一致し,毛球部組織抽出液中には性状の異なる少なくとも二種類の好中球遊走因子とリンパ球遊走因子が存在することがさらに明らかとなった.
  • 影下 登志郎, 木村 達, 中村 尚, 平井 俊二, 吉井 章, 山田 雅信, 栗谷 典量, 荒尾 龍喜
    1991 年 101 巻 1 号 p. 29-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    Intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の正常皮膚およびメラノサイト系腫瘍における分布をモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的に検討した.正常皮膚では血管内皮に陽性所見が認められたが,メラノサイトは陰性であった.色素性母斑では9例中4例において一部の母斑細胞に弱陽性所見が得られたが,青色母斑では陰性であった.メラノーマ原発巣では27例中18例,転移巣18例中14例に陽性所見が得られた.色素性母斑に比し染色性が強かった.メラノーマ細胞におけるICAM-1陽性とHLA class Ⅱ抗原発現には強い相関関係が認められた.また予後を比較した場合ICAM-1陽性症例群は陰性群に比し有意に死亡率が高いことが判明した.メラノサイト系細胞におけるICAM-1は,その悪性化や予後との関連において注目すべきと考えられる.
  • 中村 保夫, 清水 正之
    1991 年 101 巻 1 号 p. 35-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚血管肉腫細胞における膜成分の変化について,特に小胞体と細胞膜の構造異常に注目し,電顕的に検討した.(1)腫瘍の細胞質内に,粗面小胞体との連続性を示すannulate lamellaeと,多彩な形態のconfronting cisternaeが観察された.(2)細胞表面には多数の絨毛様突起が形成され,細胞質の辺縁部では細胞膜の不規則な内部陥入像が認められた.同時に腫瘍細胞による赤血球貪食像が高頻度に観察された.(3)一部の腫瘍細胞内に,特異な細胞内脈管形成を思わせる小管腔様構造が認められた.
  • 梶山 理嘉, 吉池 高志, Jirot Sindhvananda, 水口 聡子, 相川 洋介, 小川 秀興
    1991 年 101 巻 1 号 p. 43-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用などの一般的な治療に抵抗性の重症アトピー性皮膚炎に対して,PUVA療法は優れた治療法である.しかし,その実施にあたっては,入院による連続照射を基本とし,繁雑な面も少なくない.そこで,23名の重症アトピー性皮膚炎患者を選択し,外来でのPUVA療法の効果を検討した.照射は週1回を基本とし,ステロイド外用については,治療前に用いていた患者に限って外用を継続した.その結果,6~22回(平均13.0回),総照射量平均25.8J/cm2にて,13名(57%)の患者に著効をみた.著効例のうち3名は全くステロイド外用をしておらず,ステロイド外用を併用した患者でも,その使用量を著しく減少させることができた.また著効例のうち,5名はPUVA療法後のステロイド外用が不要となり,1~6ヵ月(平均3.0ヵ月)の完全寛解を得られた.また,PUVA療法を行うにあたって,より効果を発揮しやすいのはどのような患者かを分析した結果,1)女性,2)最少光毒量minimal phototoxic dose(MPD)の低い者に,より大きな効果を上げることが判った.このことは,難治性アトピー性皮膚炎患者に対する外来におけるPUVA療法の適応を考える上で一応の参考となろう.
  • 市橋 直樹, 中谷 明美, 中野 一郎, 鹿野 由紀子, 前田 学, 森 俊二
    1991 年 101 巻 1 号 p. 47-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    37歳,女性.左手に軽い瘙痒を伴う辺縁隆起性紅斑出現.遠心性に拡大し数日で消退.同様な紅斑が全身に出没するようになり,他に,関節痛,朝の両手指こわばり感,両眼瞼腫瘍出現,精査加療のため入院.抗核抗体高値,低補体血症,免疫複合体高値,抗SS-A抗体陽性,抗SS-B抗体陰性.Sjogren症候群などを考え,生検.表皮基底層に液状変性なく,真皮上層の血管周囲に核塵形成を伴ったリンパ球を主体とする細胞浸潤を認めた.同部の免疫蛍光染色は,真皮表皮境界部に沿って顆粒状に抗IgG抗体陽性.抗IgA抗体も同様に陽性.以上より蕁麻疹様紅斑で初発したSLEと診断.尿検査成績より腎障害を疑い腎生検を行ったところ,全体として基本構造の改築,メザンギアル領域の拡大を認め,びまん性糸球体腎炎の像を呈していた.腎組織の免疫蛍光抗体染色では,毛細血管からメザンギアル領域にIgGの沈着を認めた.
  • 上村 仁夫, 関根 敦子, 橋本 明彦, 副島 健市, 横須賀 達也
    1991 年 101 巻 1 号 p. 53-
    発行日: 1991年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    顔面,四肢末梢,歯齦の角化性発疹,甲状腺腫,消化管の多発性ポリープからCowden病と診断した35歳男性例を報告した.この患者にみられた胸腹部の多発性毛嚢々腫,骨盤腔内動静脈奇形もCowden病に伴うものと考えた.現在までに本邦では,自験例を含め17例のCowden病が報告されている.男女比は男8例,女9例,発表時の平均年齢は36.3歳であった.顔面,四肢末梢,掌蹠,口腔粘膜の発疹の出現頻度は,それぞれ100%,88.2%,88.2%,100%と海外82例の86.4%,70.4%,54.3%,85.2%に比し高かった.消化管ポリープの出現頻度も,88.2%と海外の33.3%に比しかなり高率であった.それに反し乳房疾患は44.4%と海外例の76.0%を下回った.甲状腺,生殖器疾患の頻度はそれぞれ64.7%,66.7%,海外例は67.1%,54.0%であった.悪性腫瘍は内外とも患者の41%にみられ,本邦では乳癌2例,甲状腺癌2例,卵巣癌1例,胃癌1例,結腸癌1例であった.Cowden病の報告は内外を問わず少ない.しかし1施設より複数の症例報告があることより,考えられているほど稀な疾患とは思われず,症例が看過されている可能性がある.皮膚科的所見が軽微であることにその原因があると思われるが,高率に内臓悪性腫瘍を併発することより,Dermadromとしての重要性もあり,今後さらに注目されるべき疾患である.
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