日本皮膚科学会雑誌
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99 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 米元 康蔵, 近藤 滋夫, 西山 茂夫
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1139-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫(メラノーマ)に存在する酵素γ-glutamyl transferaseの生物学的特性について,ヒト及びマウス由来の培養メラノーマ細胞,腫瘍組織,患者組織を材料として酵素組織化学的並びに生化学的検討を試みた.melanogenic cell lineの培養細胞には酵素組織化学的に多数の陽性細胞が証明されるがamelanoticなものにはほとんど証明されず,これはDOPA反応の所見とよく相関していた.またamelanoticな腫瘍組織にも生化学的には酵素活性は検出されるが,比活性の上ではmelanoticなものに比べはるかに低値を呈していた.一方,polyacrylamide gradient gel electrophoresisを用いたアイソザイム分析の上では肝癌患者血清にみられるアイソザイムとは明らかに異なり,およそ110KDの特徴的なバンドが検出されることがある.このアイソザイムはamelanoticであっても腫瘍形成の強いものには存在し,逆にmelanoticではあっても極めて経過の長い患者組織には認められなかった.メラノーマ組織・細胞内において本酵素はメラニン産生能と密接な関係を有するとともに,その特異なアイソザイムの存在は腫瘍の増殖力や転移能を反映する可能性が示唆された.
  • 谷垣 範子, 中村 昇二, 兼久 秀典, 政本 幸三, 喜多野 征夫
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1145-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    C3Hマウスの皮膚を酵素処理することにより毛根を大量に分離し,その細胞培養条件を検討した.毛根細胞がシャーレに付着するためには,血清が必要で10%が最適濃度であった.collagenで被覆したシャーレを用いると,細胞付着率は約2倍に増加した.次いで毛根細胞の増殖に適した培養液について調べた.無血清培地MCDB153で培養すると,混入した真皮線維芽細胞が増殖することなく毛根細胞の培養に適していた.また,細胞が増殖するためには3×104cells/cm2以上の細胞密度を必要とした.MCDB153に添加する牛脳下垂体抽出液(BPE)は毛根細胞の増殖に重要で,BPEを欠いた培養液では細胞は全く増殖しなかった.またEGFとinsulinも増殖に影響があった.培養3日目の毛根細胞のケラチン分析を行ない,培養前の毛根および表皮と比較した.培養前の毛根と培養3日目の毛根細胞の両者におけるケラチンパターンの相違はなく,それらと表皮とは大きな相違があった.今回毛根細胞の培養条件を検討することにより,真皮線維芽細胞が混入することなくその初代培養が可能となった.
  • 神野 公孝, 吉池 高志
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1153-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    多汗症と無(乏)汗症の症例それぞれ6例と4例について報告した.多汗症6例はすべて掌蹠限局性多汗症であり,いずれも局所多汗以外は健常であった.無(乏)汗症は4例経験し,それぞれGuillain-Barre症候群,先天性無痛無汗症,無汗性外胚葉形成不全,特発全身性無汗症が原因と思われた.このような症例における発汗を客観的に評価する目的で,新しく開発された局所発汗量連続記録装置を用いて,発汗量の定量を試みた.発汗誘発刺激として,(1)深呼吸,(2)対側手握り,(3)対側手温・冷,(4)暗算を用い,センサー装着後の基線安定時間をもう一つの測定変数とした.いずれの測定によっても多汗症,正常,無(乏)汗症の順に発汗量が大きかったのは当然のことである.その他にいくつかの興味ある知見を得た.即ち,(1)無汗症においてはいかなる刺激を与えても発汗は誘発されなかった.(2)多汗症においては,全ての刺激が正常より大きな発汗を誘発し得たが,特にその差は精神的刺激である暗算刺激によって最も大きかった(正常:0.18±0.04ml/min,多汗症:0.52±0.07ml/min,p<0.001).以上より,(1)局所発汗量定量が多汗,無(乏)汗症の診断のみならずその程度の判定に客観的評価を与えること,(2)掌蹠限局性多汗症では精神的刺激が最も発汗を誘発したこと,(3)発汗量測定には暗算または握り刺激発汗,基線安定時間が信頼に足る変数として有用である点,などが明らかにされた.また,従来,掌蹠限局性多汗症の原因は精神的・心理的要因によるものと理解されていたが,純然たる精神刺激による発汗が,他の自律神経刺激による発汗より有意に上昇していることで,われわれはこのことを立証することができた.
  • 早稲田 豊美
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1159-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    抗アレルギー剤トラニラスト(開発記号N-5')の薬理作用はmast cellよりのchemical mediator遊離抑制によるといわれているが,その臨床における問題点の一つは即効性がないことである.効果の発現が投与直後よりみられず1~4週遅れて発現するのであるが,その理由を合理的に説明できる報告はない.血中濃度は速やかに立ち上がり,かつ基礎実験において即効的にmast cellの脱顆粒を抑制するにもかかわらず効果発現が遅れる理由は全く不明である.著者はこの原因がトラニラストの組織内濃度の上昇の遅延によるものか否かを検討するため,ケロイド手術患者をトラニラスト術前投与期間別に5群(非投与・3日・2週・4週・8週以上)に分けて採取ケロイド内の組織内濃度を比較検討した.その結果,非投与群を除く各群の間に有意の差は見られず,よってトラニラストの効果発現の遅延する理由は組織内濃度の立ち上がりが遅いためではないことが示唆された.
  • 斎田 俊明, 池川 修一, 石原 和之
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1167-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    足底悪性黒色腫の本邦人症例43例について原発巣の最大径,病型,病期,Clark's level,Breslow's tumor thickness,患者の予後を検索,調査した上で,原発巣の最大径と他の因子との相関を検討した.色素斑部を含めた原発巣の最大径は9~70mmに分布し,その平均値(±SD)は32.8±15.9mmであった.臨床病期についてみると,転移の認められないstageⅠが31例,所属リンパ節にまで転移が認められるstageⅡが12例で,stageⅢの症例は1例もみられなかった.UICCの新stage分類では,stageⅠが16例,Ⅱが7例,Ⅲが20例であった.Level分類ではlevelⅠ(mm in situ)が6例,levelⅡが3例,levelⅢが10例,level Ⅳが13例,level Ⅴが11例みられた.mm in situの6例を除く37例の病型別内訳は,末端黒子型26例,結節型9例,表在拡大型2例であった.予後を調査しえた症例は39例であり,このうち26例は転移なしに生存中,1例は転移を有して生存中で,残り12例は原病死していた.原発巣の最大径と他の予後因子(病型,病期,level,tumor thickness)および患者の予後との間の相関を検討したところ,いずれとも有意な相関は認められなかった.ただし,原発巣の最大径が14mm未満のものには死亡例はみられず,また最大径11mm未満の原発巣でlevel Ⅱ以上の深達度を示すものはみられなかった.表在拡大型や結節型を主体とする欧米白人の悪性黒色腫症例では,原発巣の最大径が予後と相関するとの報告がみられる.これに対し,末端黒子型を主体とする本邦人足底の悪性黒色腫では,そのような有意の相関は認められないことが今回の検索にて明らかにされた.この理由は,末端黒子型ではlevelⅠ,Ⅱ程度のtumor thicknessの浅い病変が原発巣内のかなり広い部分を占めることが多いためであろうと推測された.これまでのわれわれの研究や今回の検索結果から判断すると,本邦人に多い足底悪性黒色腫の予後を改善する上で当面最も重要なことは,皮疹の最大径が7mmを越える足底の色素性病変を見逃さぬことと,足底悪性黒色腫を最大径が11~14mm程度までの段階で適切に治療することであるといえよう.
  • 黒木 康雅, 立山 直, 黒川 基樹, 天野 正宏, 小橋 正洋, 川名 修徳, 楢原 進一郎, 田尻 明彦, 多田 茂, 岡崎 美知治, ...
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1173-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    最近5年間に当科で経験した菌状息肉症,成人T細胞白血病・リンパ腫を除く,皮膚を病変の主座としたT細胞性リンパ腫7例につき検討した.男性5例,女性2例で,初診時の平均年齢は61歳であった.皮疹は多発性の腫瘤や皮下硬結を呈したものが6例と多く,組織像では皮下組織にまで及ぶ稠密な腫瘍細胞浸潤が全例にみられたが,その浸潤形態,細胞の形と大きさは様々であった.表面膜性状も非常に多彩であり,単一疾患でないことが推察された.治療は化学療法(5例)と電子線照射療法(局所:4例,全身:1例)が主体で,7例中5例は完全寛解に導入できた.死亡3例の平均生存期間は初診から11.7ヵ月,生存4例の現在までの観察期間は12ヵ月から40ヵ月であった.ATLと対比した臨床病理学的特徴と治療などについて検討を加えた.
  • 馬場 直子, 長谷 哲男, 中嶋 弘
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1183-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    耳垂に巨大腫瘤として発症し,病理組織学的に木村病と診断した症例について免疫組織化学的検討を中心に報告した.PAP法では,IgEは濾胞胚中心内に明瞭な網状分布として陽性を示し,また,胚中心外に散在する比較的大型細胞の膜表面にも顆粒状の陽性を示した.後者の細胞は,IgEとギムザ重複染色で肥満細胞と同定された.ABC法では,H107(低親和性の抗IgEFcレセプター抗体)及びDAKO-DRC1(抗樹枝状細胞網細胞抗体)を用いた免疫染色で,両者ともリンパ濾胞胚中心の明調部に一致して網状強陽性を示した.以上より,本症例の病変内ではリンパ濾胞胚中心内にIgEの網状分布とIgEFcレセプターを有する樹枝状細網細胞とB細胞が増加していること,及びリンパ濾胞間にIgE陽性の肥満細胞が多数浸潤していることが確認され,IgEクラス特異的免疫反応が木村病の病態と深く関わっていることが推察された.
  • 久米 昭廣, 上田 清隆, 佐野 榮紀, 船井 龍彦, 小林 與市, 橋本 公二, 吉川 邦彦
    1989 年 99 巻 11 号 p. 1191-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    26歳,女性のPSS,SLE,Sjogren症候群の合併した1例に対して,ステロイド剤とCyclosporin Aとを中等量併用したところ,いずれの副作用も認めず,皮膚硬化,多発関節炎症状の改善,同時に,抗DNA抗体価,補体価をはじめとする免疫学的異常も改善された.一方内臓病変に対する効果は,現在まで認めていないが,皮膚硬化に対する有効な治療法がない現在,Cyclosporin Aが,PSSの新たな治療薬となる可能性を示唆している.
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