日本皮膚科学会雑誌
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113 巻, 14 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
生涯教育講座
  • 戸倉 新樹, 森 智子
    原稿種別: 生涯教育講座
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2025-2031
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    一次刺激性接触皮膚炎の極型である急性刺激性接触皮膚炎は,接触原である化学物質の種類により特徴ある臨床像を呈する.またその発症機序も個々の化学物質によって異なる.この急性刺激性接触皮膚炎と化学熱傷の間に境界線を引くことは困難であり,同列に論じられる必要がある.化学熱傷は酸・アルカリによる皮膚傷害に対して使われてきた呼称であるが,実際にはその他の機序によっても皮膚炎が誘導される.フッ化水素はその代表的なものであり,速やかに驚くほど深部まで壊死を起こす.酸としてよりも,強力な組織傷害性をもつフッ素イオンの発生により組織を破壊する.セメントは機械的傷害や六価クロムによるアレルギー性接触皮膚炎を起こすが,慢性の接触刺激では活性酸素の関与も示唆されている.しかし水酸化カルシウムの強アルカリによる腐食作用が最も強い傷害で,セメント熱傷と呼ばれている.灯油皮膚炎は灯油による角化細胞の破壊によるが,サイトカインの関与も考えられている.過酸化水素の接触によって生じる皮内での酸素発生による水疱形成のように特殊なものもある.
原著
  • 黒瀬 浩一郎, 森 理, 橋本 隆
    原稿種別: 原著
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2033-2038
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    近年,培養表皮細胞が熱傷その他の皮膚欠損の被覆材料として臨床応用されつつある.我々は培養表皮細胞に代わるものとして,抜去毛包から得た外毛根鞘細胞を培養する方法を検討した.これまで外毛根鞘細胞の培養は困難とされ,また線維芽細胞のover growthの問題もあり,安定した成果が得られる培養法の確立が遅れていた.今回我々はfeeder layerなどの煩雑な手技を用いることなく,また毛包の酵素処理やcollagen coated dishも用いず外毛根鞘細胞を培養する方法を確立したので報告する.先ず,培養外毛根鞘細胞シートによる植皮の臨床応用に向けて基礎的な検討を行った.すなわち,年齢,性,毛包抜去部位,培養方法に関して比較検討を行った.対象は7歳から83歳までの男性11名,9歳から81歳までの女性12名で,頭皮から抜毛後に外毛根鞘細胞の培養を行った.培養方法は4種類のexplant cultureを施行した.培養条件として抜去毛包を①静置するのみ,②酵素処理のみ,③カバーグラス固定のみ,④酵素処理後カバーグラス固定の4条件で培養を施行した.その結果①および②の方法では毛囊が浮遊し培養には不適と考えた.③,④の方法では培養の成功率に差はなく男女あわせ32例中26例,81%の症例で培養可能であった.また,毛包をカバーグラスにて固定することにより外毛根鞘細胞は付着増殖し,培養皿のcollagen coatは不要であった.年齢,性,毛包抜去部位による培養成功率に有意差はみられなかった.また,重層化と3次元培養による角質形成能について培養表皮細胞との比較も行ったが,いずれも差を認めなかった.以上より,我々が確立した外毛根鞘細胞培養法は,単に抜去毛囊をnon-coatingの培養皿に静置後,カバーグラスにて固定し,10% fetal calf serumを含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(10% FCS/DMEM)にて培養し,コロニーがみられたら低Ca培地に交換し,細胞が増えconfluentに達したら10% FCS/DMEMに再び交換し重層化するという極めて単純なものである.培養自己外毛根鞘細胞の長所は何度でも患者から細胞が採取できること,皮膚に傷を残さないことである,今回の検討で年齢,性,毛囊抜去部位にも影響されないことが判明し,また,酵素処理,培養皿のcollagen coatも不要で,創傷被覆への臨床応用が大いに期待できるものと考えた.
  • 金森 志奈子, 上里 博, 山城 栄津子, 中野 純一郎, 新垣 肇, 稲福 和宏, 宮里 肇, 野中 薫雄
    原稿種別: 原著
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2039-2044
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    患者は2歳10カ月の女児で,生後4カ月頃より腰背部に紅色局面が出現した.近医で血管腫を疑われ,経過を観察されていた.しかし皮疹は徐々に増大し,2歳7カ月頃より圧痛を訴えるようになった.皮膚生検の結果dermatofibrosarcoma protuberans(DFSP)を疑われ,当院を紹介された.初診時の皮疹は径45×25mmの軽度隆起した浸潤性紅色局面で,一部に青紫色を呈する部分もみられた.病理組織所見は真皮浅層から脂肪織にかけて紡錘形の核を有する腫瘍細胞が不規則に増殖し,storiform patternを呈する部分も認められた.一部にメラニン色素を持つ細胞もみられた.免疫染色では,腫瘍細胞はCD34抗体およびvimentinが陽性であったが,S-100蛋白は陰性であった.一方メラニン含有細胞はvimentinおよびS-100蛋白は陽性であった.なお抗CD34抗体,HMB45,SMA(α-smooth muscle actin),EMA(epithelial membrane antigen)desminおよびFactor XIIIaはいずれも陰性であった.以上よりpigmented DFSP(Bednar tumor)と診断した.治療は全身麻酔下で,腫瘍辺縁から2cm離して筋膜上で全切除した.術後9カ月現在腫瘍の局所再発はない.
  • 山本 純照, 宮川 幸子
    原稿種別: 原著
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2045-2048
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    患者は62歳,男性.2003年2月初旬から顔面に皮膚の潮紅が生じ,また同時期より動悸,軽度の呼吸苦,食欲低下も出現した.同年3月1日に胸部の毛細血管拡張と胸腹部の表在静脈の怒張に気付いた.同年3月4日に当科を受診.初診時両側眼瞼,頬部を中心に頸部まで皮膚の潮紅,毛細血管拡張を,両側上眼瞼には軽度の浮腫を認めた.外頸静脈は坐位でも著明に怒張していた.胸部でも毛細血管拡張を呈し,さらに胸腹部の表在静脈の著明な怒張を認めた.胸部造影CTにて縦隔に腫瘍陰影を認め,3次元造影CTでは上大静脈は全周性に著明な狭窄を示し,側副血行路の発達も認めた.また気管支鏡にて気管分岐部から右気管支にかけて腫瘍による狭窄を認め,気管支鏡下で同部の内側に突出した組織を生検し,低分化型肺腺癌の像を得た.以上から自験例を肺癌とその縦隔リンパ節への転移巣により生じた上大静脈症候群と診断した.
  • 岡田 奈津子, 西野 洋, 澤田 由佳, 宮島 進
    原稿種別: 原著
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2049-2057
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科領域ではステロイド剤の長期内服治療を必要とする症例にしばしば遭遇する.しかし,その副作用である骨粗鬆症についての臨床データは少ない.過去8年間にステロイド長期内服治療を行った膠原病8例,自己免疫性水疱症9例,その他の慢性炎症性皮膚疾患18例において,二重X線吸収測定法で腰椎骨密度を測定し,その推移とステロイド投与量との関連を検索した.膠原病,自己免疫性水疱症では大量長期にステロイドが投与されており,投与後では骨粗鬆症が合わせて5例(29.4%),骨減少症が8例(47.1%)にみられ,著明な骨密度の低下をきたした.一方,紅皮症や慢性湿疹等の少量長期投与症例でも骨密度の低下がみられたが,その変化は比較的軽度であった.ステロイド骨粗鬆症の予防と治療のためには,高齢,閉経や基礎疾患などの患者の背景因子に留意し,定期的な骨密度測定に基づく対策が必要と考えられた.
  • 根本 治, 中川 秀己, 五十嵐 敦之, 江藤 隆史, 小澤 明, 中山 樹一郎, 朝比奈 昭彦, 大井 綱郎
    原稿種別: 原著
    2003 年 113 巻 14 号 p. 2059-2069
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    目的:乾癬患者自身が,現在行われている治療をどのように評価しているのかを調査し,患者の治療に対するニーズを把握し,それを治療に反映させることにより,患者の治療満足度を向上させるために,治療効果,治療満足度,QOLなどに基づいた患者満足度調査を実施した.方法:18項目の患者記入欄と医師記入欄からなるアンケート調査表を作成し,8施設で試験を実施した.結果:アンケート調査表の回収が可能であった8施設262名の回答を集計した結果,現在の乾癬治療の総合満足度は,「満足」と「やや満足」の合計(満足率)が49%と改善の余地が認められた.現在の症状に対する治療効果の満足度では,「気になる」と「少し気になる」の合計(気になる率)が最も高かったのは「外観」であり,以下「ふけの量」,「かゆみ」の順であった.また,社会生活・心理面で「気になる率」が最も高かったのは「旅行・海水浴・水泳・温泉での人目」であった.また「高い治療効果を望む」という回答は男性あるいは重症患者に多く,「副作用は望まない」という回答は女性に多かった.さらに患者が改善を求める項目は属性により異なることから,患者個々の属性を十分に理解した治療の必要性が明らかになり,特に治療に関する情報提供,患者の社会生活や心理面への支援が重要であることが示唆された.
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