日本皮膚科学会雑誌
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119 巻, 6 号
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皮膚科セミナリウム 第49回 偽癌
  • 長野 徹
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第49回 偽癌
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1049-1053
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    ケラトアカントーマは日常臨床の現場において時に遭遇する腫瘍性疾患である.本疾患は,①急速に増大したのち中央に角栓を入れるドーム状の結節となり,②組織像は有棘細胞癌(SCC)に類似しているが転移をすることは稀で,③数カ月の経過で自然消褪するという特徴的な形態,経過を示す毛包由来の皮膚良性腫瘍である,とされている.ただしSCCの1亜型とする考えもあり結論は出ていない.本稿ではケラトアカントーマの臨床,病理学的な特徴について述べたのち,SCCとの鑑別,本疾患の取り扱いについて概説する.なお,既に本セミナリウム24回偽癌 1.ケラトアカントーマ(竹中秀也先生ご執筆)の項1)があり,また最新皮膚科学大系 表皮系腫瘍 ケラトアカントーマ(宇原 久先生ご執筆)の項2)があり参照されたい.
  • 高田 実
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第49回 偽癌
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1055-1058
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    Spitz母斑は小児に好発する良性の色素細胞腫瘍であり,臨床的に1 cm未満の境界明瞭な色素性または無色素性結節としてみられる.組織学的にはmaturationを示す対称性境界明瞭な病巣であり,表皮の過形成を伴う.遺伝子解析ではNRASやBRAF遺伝子変異はなく,染色体の数的異常を示さない.メラノーマとの鑑別が極めて困難な症例が時にあり,その対応は慎重に行う必要がある.
  • 戸倉 新樹
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第49回 偽癌
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1059-1064
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    偽リンパ腫は真性リンパ腫に対する用語であり,組織学的にリンパ球が密に浸潤しリンパ腫様であるが,臨床経過としては良性のものを呼ぶ.皮膚は真性リンパ腫と同様に偽リンパ腫が多い臓器である.皮膚偽リンパ腫の多くは反応性である.増殖するリンパ球の種類により,B細胞性偽リンパ腫とT細胞性偽リンパ腫がある.前者の典型は皮膚リンパ球腫(皮膚良性リンパ腺腫症)であり,indolentの臨床経過を辿る皮膚原発B細胞リンパ腫との鑑別が重要である.後者の代表疾患は歴史的に皮膚リンパ球浸潤症であるが,むしろ薬疹などによる偽リンパ腫を第一に考慮する必要がある.
原著
  • 竹内 藍子, 出口 順啓, 岩本 拓, 川村 龍吉, 柴垣 直孝, 松江 弘之, 島田 眞路, 大竹 直人
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1065-1068
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    80歳,女性.仙骨部褥瘡の細菌感染の疑いで当科を紹介受診した.初診時,臀部は約40×30 cmと巨大に腫大しており,仙骨部には12×11 cm大の白色潰瘍が認められ,左臀部全体に発赤・熱感・握雪感を伴っていた.単純X線にて同部位にガス像が認められたため,仙骨部褥瘡からの細菌感染によるガス壊疽を疑い,同日に緊急切開術を施行した.しかし,術中所見では,潰瘍底から臀部皮下全体が容易に崩れる白色腫瘍塊で置換されていた.後に患者は脊索腫にて数回手術歴があることが判明し,仙骨部の白色腫瘍塊の病理組織学的所見も脊索腫に矛盾しなかった.術後の胸腹骨盤CTにて骨盤内のほとんどを腫瘍が占めており,椎体,腸骨も腫瘍の浸潤により破壊されていた.創部からの細菌培養ではClostridium perfrigensを認め,クリストリジウム性ガス壊疽を伴う脊索腫と診断した.脊索腫は皮膚科領域で稀な疾患であるが,仙尾骨部および脊椎領域における白色潰瘍をみた際には本疾患も念頭におく必要があると考えられた.
  • 石田 正, 青田 典子, 福田 知雄
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1069-1077
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    71歳女性,骨髄異形成症候群(MDS)の既往があり,最近までプレドニゾロンを内服していた.1年以上前より右下腿伸側に紅褐色皮疹が出現,近医皮膚科にてステロイド外用で経過観察されるも軽快せず,当科受診した.皮膚生検により真皮深層に褐色の真菌要素を確認,生検組織の培養でExophiala(E.)jeanselmeiを検出し,chromomycosisと診断した.イトラコナゾールの内服を開始し,約3カ月の経過で治癒した.黒色真菌感染症の病名や病型分類に関しては様々な意見があるが,近年は黒色真菌感染症を包括する病名としてchromomycosisが使用されることが多い.本症は臨床症状や起因菌の寄生形態によってchromoblastomycosisやphaeohyphomycosisなど様々な病型に分けられており,起因菌の種類や宿主の免疫状態など,様々な因子によりこれらの病型が形成されることが知られている.我々が経験した症例もMDSの合併から免疫異常が疑われ,病態への関与が考えられた.そこで過去10年におけるchromomycosis本邦報告例を検討し,起因菌と宿主の免疫状態の観点から本症の病態を検討した.結果,Fonsecaea(F.)pedrosoi感染ではすべてがchromoblastomycosisの病型であった(28例全例)のに対し,E. jeanselmeiでは1例を除く全例がphaeohyphomycosisであった(12/13例).Phialophora(P.)verrucosaではchromoblastomycosisとphaeohyphomycosisがそれぞれ2例ずつであった.またE. jeanselmeiではすべてに膠原病や悪性腫瘍などの合併症が認められ(13例全例),F. pedrosoi(8/15例)やP. verrucosa(2/4例)などと比較して明らかに多くみられた.E. jeanselmeiは免疫に異常がある宿主において感染し,phaeohyphomycosisの病型をとりやすい菌種と思われ,既存の考えを裏付けるものであった.
  • 百瀬 葉子, 増澤 幹男, 江藤 宏光, 佐藤 勘治, 勝岡 憲生, 梅本 尚可
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1079-1083
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳,女.子宮体癌術後ステージ2のリンパ浮腫に血管肉腫を続発し,Stewart-Treves症候群(以下STSと略す)と診断した.血管肉腫は小結節型で,結節は左下肢と下腹部に散在していた.左鼠径部リンパ節に転移がみられたが,遠隔転移は認めなかったことから局所集中治療を目的に動注化学療法を選択し,腹部大動脈下端部からパクリタキセルを動注した.通院にてbiweeklyでパクリタキセルを15カ月間継続投与した.CR(complete response)となったため,以後ドセタキセル点滴静注をmonthlyで継続した.治療開始から26カ月目,左大腿部に結節病変が1個再発したため単純切除を行い,その後ドセタキセル点滴静注をbiweeklyに戻した.治療開始から36カ月経過した現在まで新たな再発はない.自験例での治療経験からタキソイド系抗腫瘍剤の長期動注療法はSTSに対する治療法の一つとなり得ると判断した.
  • 下浦 真一, 中野 英司, 藤原 進, 高井 利浩, 村田 洋三, 熊野 公子
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1085-1089
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    当院において2002年から2007年の間にGemcitabine(Gemzar®)(以下GEMと略す)投与後に皮疹を生じ,当科を受診した12例について検討した.患者は男性10人,女性2人,年齢は51歳から78歳(平均64.9歳).全例が境界不明瞭な淡い紅色斑,軽度浮腫性の紅斑を生じ,有害事象における皮疹のgradeはすべて1ないし2であった.GEMの初回投与で生じたものが10例,2回目投与後に生じたものが2例であり,初回投与で生じた症例が多かった.皮疹出現まで平均4.4日,皮疹消退まで平均9.2日で,消退時期が不明な1例を除いてすべてが14日以内に消退した.部位は12例中11例が体幹に生じ,体幹に加えて上腕・大腿に多くみられた.2クール以上施行したのは6例で,2クール目以降の皮疹の再現率は5.6%であった.以上からGEMによる皮疹は非アレルギー性機序によるものであり,必要に応じて再投与は可能であると考えた.
  • 池原 進, 室井 栄治, 穐山 雄一郎, 吉崎 歩, 原 肇秀, 佐藤 伸一
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 6 号 p. 1091-1095
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    手足症候群は手掌や足底に有痛性の浮腫性紅斑を生じる抗癌剤による皮膚有害反応のひとつである.今回我々は2008年4月に販売開始となった経口多キナーゼ阻害剤であるソラフェニブによる手足症候群の5例を経験した.転移性腎細胞癌に対しソラフェニブ投与を開始された56~76歳の5名の患者において,内服開始後2週間以内に手足症候群を認めた.いずれの症例もソラフェニブの減量,ステロイドの外用で軽快した.ソラフェニブによる手足症候群はこれまでの薬剤によるものに比べて,より発症頻度が高く,早期から過角化が強く現れる傾向があることが報告されている.手足症候群は重症例では患者のQOLを著しく損ない,また内服継続に支障を来す可能性がある.我々皮膚科医が症状や対処法を熟知することが重要であると考えた.
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