白斑は後天性に生じる脱色素性疾患のひとつであり,本邦では人口の0.5~1.0%が罹患する(日本皮膚科学会尋常性白斑診療ガイドライン第2版2025).白斑は難治性であり有効な治療法が少ない中,紫外線療法とくにnarrowband UVBが広く用いられている.一方,白人皮膚や白皮症同様,白斑表皮にはメラノサイトの減少・消失によるメラニン量減少があるため,長期に使用する紫外線照射に皮膚発癌のリスクが想定された.しかし,近年の多くの報告から,白斑はむしろ正常対照とくらべても皮膚癌発症は少なく,紫外線照射による発癌リスクも少ないことが明らかになった(註:この稿では白斑を,広義のleukodermaではなく,病名としての尋常性白斑vitiligoに同義とする).
白斑の外科治療は,非分節型より分節型の方が色素再生しやすく再発率が低く,顔面の分節型白斑が最適である.国内ではこれまでミニグラフト法・スマッシュグラフト法・吸引水疱蓋表皮移植法(以下,サクションブリスター)が外科治療の中心であったため,小病変に限定した適応であった.2024年10月メラノサイト含有ヒト表皮細胞シート;ジャスミン™が白斑に保険適用され,より広範囲病変の治療が可能となった.本項では,国内外で行われている各外科治療の特徴・比較データ,ジャスミン™の適正使用と適応案などについて,自験例を呈示しながら解説する.
日本皮膚科学会と日本白斑学会が共同して「尋常性白斑診療ガイドライン第2版2025」策定委員会を発足した.尋常性白斑に関する近年の基礎的・臨床的な発展を反映し,本邦の実情にあわせたガイドラインの改訂を図っている.多岐にわたる領域を議論しているが,特に重要と考えられる項目について報告する.
コカミドプロピルベタイン(CAPB)はヤシ油植物ココヤシの種子から得られる脂肪油由来の両性界面活性剤で,シャンプーに頻用されている.今回,頭部・顔面難治性皮膚炎の原因や増悪因子を明らかにするためにパッチテストを行い,使用していたシャンプーに含まれたCAPBが原因と確認した.これを含まない製品に変更することで改善した症例7例(男2例:女5例,年齢12~69歳,皮膚炎の罹病期間1.5カ月~数年)を提示し,CAPBによるアレルギー性接触皮膚炎につき考察を加え報告した.
結膜メラノーマは本邦で新規発症数が10人程度と非常に稀であり,再発・転移の多い予後不良な疾患である.当科で全身療法を施行した進行期結膜メラノーマの6例をまとめた.初回の全身療法薬として免疫チェックポイント阻害薬が5例,キナーゼ阻害薬が1例,選択されており,免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けた5例中3例が奏効した.全身療法開始からの生存期間中央値は15.5カ月であり,1年生存率は50%であった.一般に粘膜メラノーマは皮膚メラノーマと比較して全身療法の効果が低い傾向があるが,結膜メラノーマは皮膚メラノーマと同様の有効性を示す可能性がある.